翁面の時代
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/14 20:28 UTC 版)
能楽の源流は、翁猿楽(式三番)にあるとされ、翁猿楽が演じられたことを示す最古の記録は、13世紀末の奈良春日大社の祭礼記録にある。1283年(弘安6年)の『春日若宮臨時祭記』には、次の記事があり、猿楽方の諸役の中で翁の役のみが「翁面(ヲキナヲモテ)」と呼ばれている。 猿楽 児虎松殿 翁面延覚坊 三番猿楽大輔公 冠者美之君 父允善永坊 式三番に用いられる面は、平安時代末期に創作され、鎌倉時代には完成していたようであり、父尉、翁(白式尉)、三番叟(黒式尉)、延命冠者の4面が用いられていたようである。ベルリン国立民族博物館(英語版)所蔵の翁面には、面裏の漆の下に弘安元年(1278年)の墨書銘があり、翁面の造形が鎌倉中期には確立していたことが分かる。 なお、後世の言い伝えでは、翁面の最古の作家として聖徳太子、淡海公(藤原不比等または藤原鎌足)、弘法大師(空海)、春日(鞍作止利または稽文会・稽主勲)の4人を「神作」と呼んでいる。 世阿弥の言葉を記した『世子六十以後申楽談儀』には、「面の事。翁は日光打ち。弥勒、打ち手也。」とあり、翁面の優れた打ち手として日光と弥勒の2人が挙げられている。 4面のうち、延命冠者を除く3面は、顎が口の横から切り離されて紐で繋がれた「切り顎」という構造をとっており、他の能面にはない特徴である。切り顎は、声がこもらずに聴こえやすくするための構造とも考えられる。
※この「翁面の時代」の解説は、「能面」の解説の一部です。
「翁面の時代」を含む「能面」の記事については、「能面」の概要を参照ください。
- 翁面の時代のページへのリンク