縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(DMRV, hIBM, IBM2, Nonaka Myopathy, QSM, GNE myopathy)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 06:31 UTC 版)
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20〜30歳頃に発病し前脛骨筋が最も侵されやすいことから、つま先が上がりにくくつまずきやすい、スリッパが脱げやすい等の症状が出る。歩き方はつま先が上がりにくいため、必然的に鶏歩(垂れ足)となる。筋肉の萎縮は10歳前後から確実に始まっているものと考えられるが、本人にはなかなか自覚することができないようである。その後、ハムストリング、胸鎖乳突筋等の萎縮が進行し、発症後10年程度で歩行が不可能となる。大腿四頭筋が侵されにくいのもこの病気の特徴の1つである。手の筋力も遠位から低下し、やがて近位にも及んでくる。最終的には寝たきりとなるとなる可能性が高い。筋生検で筋線維中に縁取り空胞(rimmed vacuoles)が観察されることからこの病名が付いているが、縁取り空胞が見られる筋疾患は他にも存在する。原因遺伝子はGNEであり常染色体劣性遺伝する。患者の筋線維中のある種のタンパク質ではシアリル化(シアル酸の付加の程度)が低下していることが確認されている。現在のところ、治療法は存在しない。蛇足になるが、GNEの変異によりシアル酸が過剰に生成されるシアルリア(Sialuria)という疾患が存在する。縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー (Distal myopathy with rimmed vacuoles [DMRV])は、1981年にNonakaらにより報告されたことから、埜中ミオパチー (Nonaka myopathy)とも呼ばれる。1984年Argovらにより、類似する疾患がQuadriceps sparing myopathy (QSM)として報告され、その後、QSMは欧米で遺伝性封入体ミオパチー (hereditary inclusion body myopathy [hIBM])あるいは2型封入体ミオパチー (IBM2)と呼ばれるようになった。DMRVとhIBMは臨床病理学的に極めて類似していることから同一疾患であることが疑われていたが、DMRVもhIBMと同様にGNE遺伝子変異を原因とすることが明らかとなり、両疾患は同一疾患であることが確認された。より統一的な疾患名を求めて、最近ではGNEミオパチー (GNE myopathy)と呼ばれるようになってきている。
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