筋の正常組織
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/29 13:30 UTC 版)
骨格筋には持続的な運動に適した遅筋であるタイプ1線維と素早い運動に適した速筋であるタイプ2線維の2種類に分かれる。タイプ1線維はいわゆる赤筋であり、ミトコンドリア内で脂肪酸のβ酸化によるATP合成を主なエネルギー源としている。ゆっくりと収縮することから生理学的には遅筋と呼ばれ、姿勢保持に働く抗重力筋は主にタイプ1線維である。一方、タイプ2Aおよび2B線維はいわゆる白筋であり解糖系によるグリコーゲン分解を主なエネルギー源としている。速い収縮をすることから生理学的には速筋と呼ばれる。タイプ2C線維は未熟な線維である。ミオシンATPase染色で区別される。成人の骨格筋、特に生検をよくされる上腕二頭筋や大腿直筋では1、2A、2Bがモザイク状に分布し各々1/3ずつとなる。2Cはタイプ1とタイプ2の中間的な性質をもつ。2C線維は乳幼児では正常筋でも認められるが4〜5歳になると殆ど認められない。成人では1%未満である。筋線維タイプは脊髄前角細胞が決定している。タイプ1線維を支配する神経を切断し、タイプ2線維を支配する神経による再支配がおこるとその筋はタイプ2線維となる。胎生期、筋線維が形成される過程で筋芽細胞が融合してできる筋管細胞はすべてタイプ2C線維であり、神経支配を受けて初めて筋線維タイプが決定する。したがって標本内にタイプ2C線維を認めた場合は神経支配を受けていない未熟な筋線維の可能性を考える。具体的には筋分化遅延、再生線維(筋再生は発生の過程を繰り返すため)、脱神経のいずれかである。筋分化遅延は先天性ミオパチー、先天性筋強直性ジストロフィーなどが該当する。これらの疾患では出生後も多数のタイプ2C線維を認める。また再生筋も2C線維となるため、筋ジストロフィーや多発性筋炎などでは長期にわたって2C線維が認められる。また神経原性疾患で脱神経が起きた時、神経再支配で筋線維のタイプが変化するときに2C線維を経由して変化する。 項目赤筋(タイプ1)白筋(タイプ2)収縮時間 遅い 速い 神経伝導速度 遅い 速い 酸化酵素活性 高い 低い ミオグロビン 多い 少ない 解糖系酵素活性 低い 高い グリコーゲン 少ない 多い 脂質 多い 少ない ミトコンドリア数 多い 少ない Z帯幅 広い 狭い
※この「筋の正常組織」の解説は、「筋病理学」の解説の一部です。
「筋の正常組織」を含む「筋病理学」の記事については、「筋病理学」の概要を参照ください。
- 筋の正常組織のページへのリンク