筆記用具と素材
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 14:54 UTC 版)
エジプト文学はさまざまな媒体を用いて書かれた。石に文字を刻むのに必要な鑿を別にすると、古代エジプトの主要な筆記具は葦ペン、つまり茎の端を傷付けてブラシのような形にした葦であった。葦ペンはパピルス草(カミガヤツリ)の髄を並べて叩き潰して製した薄い素材であるパピルスの巻物や、陶器や石灰岩の小さな破片であるオストラコン(シャード(英語版))に、カーボンブラックや赤の黄土の顔料で文字を書くのに用いられた。パピルスの多くはパリンプセスト、すなわち以前書かれていた内容を消して新しいものを書いた手稿として残っているので、パピルスは比較的高価な商品であったのであろうと考えられている。このことや、パピルス文書を破り取って小さな手紙を作ることが行われていたことは、パピルス草の生育する時期が限られていたためのパピルスの季節的な不足が生じていたことを推測させる。オストラコンや石灰岩片が短い書き物の媒体としてしばしば使われたのもこのためと考えられる。石や陶器のオストラコンやパピルスに加え、木や象牙や石膏も媒体として用いられていた。 アエギュプトゥス(ローマ帝国によるエジプト支配)の時代までには、エジプトの伝統的な葦ペンはグレコ・ローマン世界(英語版)で主流であった筆記具によって取って代わられた——より短く、太く、ペン先(英語版)のある葦ペンである。同様に、エジプト古来の顔料も、ギリシアの鉛によるインクに置き換えられていった。ギリシア・ローマの筆記具の採用はエジプト人の筆跡に影響を及ぼし、ヒエラティックの記号はより広い余白が取られ、より丸い飾り書きと、より明確な角を持つようになった。
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