第4話 「太平洋漏水孔」(ダブックウ)漂流記
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東経160度南緯2度半、ビスマルク諸島の東端から1000キロたらず、グリニッチ島から東南に約800キロ、すなわちミクロネシアとメラネシアの間に、ニューギニア土人が「海の水の漏れる穴(ダブックウ)」と呼ぶ魔の海域がある。この海域には、メールストレームの渦の百倍はあるという巨大な渦潮が常に存在している。 17世紀はじめ、デ・クィロスはこの渦巻の内側に島々が七、八つ存在しているのを目撃した。1912年にこの海域を探険した独逸ニューギニア会社(英語版)の探検隊は、この「太平洋漏水孔」の海面下が一面の暗礁で、桁付き独木舟(アウトリガード・カヌー)以外では接近できないこと、その内側が極度の高温多湿で、気温が45℃に達することを確認した。 大正3年(1914年)秋、日本海軍が赤道以北の独領諸島を占領した頃、折竹の義兄が経営する「海南社」は、早くも占領諸島とオーストラリアとの通商を始めていた。折竹の乗る海南社の水凪丸は、「太平洋漏水孔」附近を航行中、二羽のカツオドリに引かれて漂流する五歳くらいの男児を発見し、拾い上げた。その子の背には、ドイツ人キューネと名乗る人物の手紙がくくりつけられていた。 独逸ニューギニア拓殖会社の若き幹部フリードリッヒ・キューネは、冒険旅行に出かけている間に独領ニューギニアがオーストラリア艦隊に占領されてしまい、フィンシャハのドイツ軍守備隊長フォン・エッセンとその妻子がオーストラリア軍によって殺害されたことを知る。復讐のためオーストラリア軍守備陸戦隊長ベレスフォードの子ジャッキーを拉致しようとしたキューネだったが、間違って、ジャッキーの遊び友達である日本人の床屋の子、宇佐美ハチロウを誘拐してしまう。こどもを返すわけにもいかず、独木舟(プラウー)でニューギニアをさまようキューネは、独領ニューギニア最北端のノルド・マレクラで、サモア王タマセの孫娘、ナエーアと偶然に出会う。彼女はサモア酒(カヴァ)に溺れる父と兄を諌めたため、サモアのドイツ領事によってこの地に追放されていたのだった。 行くあてもなく太平洋をさまよう三人は、ついに「太平洋漏水孔」に巻き込まれ、その内側の島の一つにたどりついた。暑さのため知力を減退させていったキューネだったが、最後の知力をふりしぼって、カツオドリを使ってハチロウを脱出させたのである。
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