第1回フューチュリティ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 07:05 UTC 版)
「フューチュリティステークス (アメリカ合衆国)」の記事における「第1回フューチュリティ」の解説
第1回フューチュリティの開催は、1888年のレイバー・デイ(9月の第一月曜日)である9月3日に行われた。競馬場があるコニーアイランドには全米から未曾有の4万5000人の大観衆が押し寄せ、ブックメーカーたちの売上は100万から150万ドルに達した。当時のニューヨーク・タイムズは、サンドイッチが18000食売れたとか、クラムチャウダーが500ガロン売れたとか、ソーダが600箱も売れた等と伝えている。競走は4分の3マイル(約1200メートル)で行われ、最終登録に残った19頭のうち14頭が出走した。 全米から集まった2歳馬のなかで、単勝1番人気となったのがケンタッキーから来たスプリンターのプロクターノット(Proctor Knott)で、1.2倍の大本命となった。プロクターノットは8月11日にモンマス競馬場で行われたジュニアチャンピオンステークスに勝ち、2歳馬の頂点に立っていた。 フューチュリティ競走の前、馬主のもとへ、プロクターノットを3万ドルで購入したいという申し出があった。ゴールドラッシュで財を成したEJ“ラッキー”ボールドウィン(サンタアニタ競馬場の創設者)によるこの申し出は丁重に断られた。真偽は定かではないが、ベルモントステークスの生みの親であり競馬会の重鎮だったオーガスト・ベルモントは4万ドルを提示したが、馬主はこれも断った。 対抗馬は単勝5倍のオーリコーマ(Auricoma)だったが、複勝ではオーリコーマが1.2倍で一番売れていた。(プロクターノットは1.4倍。)3番人気がジュニアチャンピオン3着のサルヴェイター(Salvator)で単勝7倍だった。オーガスト・ベルモントもフォレストキング(Forest King)を出したが、単勝41倍と低評価だった。 2度のフライングがあって、3回めのやり直しで競走が始まった。スタートで先頭に立ったのはオーガスト・ベルモントのフォレストキングだった。2番手にガーレン(Galen)、その後ろにオーリコーマ、プロクターノット、サルヴェイターが続き、あとは一団だった。しかし、最初の1ハロンでフォレストキングに代わってガーレンが先頭に出た。オーリコーマはいつの間にか脱落していった。しかしこれらの様子は、最後の直線前で待ち構えている大観衆には見えなかった。 大観衆に最初に見えたのは、コーナーを単騎先頭で曲がってくる、紫地に白袖の勝負服のガーレンの姿だった。ガーレンは大きく後続を離しているように見えた。しかし実際にはガーレンは大外を回ってきただけで、内ラチぴったりを回ってきたプロクターノットとサルヴェイターに対して半馬身しかリードがなかった。人気のオーリコーマの姿がなく、オーリコーマに賭けていた観衆からは悲鳴が上がった。 直線を向いて、大外のガーレンと内のプロクターノット、サルヴェイターは半馬身からクビの差で激しく争った。並んで叩き合いになったプロクターノットとサルヴェイターは2度3度と体をぶつけあった。最後に半馬身ほどプロクターノットが前に出て、うまくサルヴェイターの針路を遮った。1位プロクターノット、半馬身差の2位にサルヴェイター、1馬身遅れた3位にガーランが入線した。サルヴェイターのハミルトン騎手はプロクターノットによる進路妨害を申し立てたが却下された。この結果、プロクターノットのフューチュリティ優勝が決まり、この世代の2歳チャンピオンとなった。 こうして第1回フューチュリティは大盛況で終わったが、競走の結果そのものは、関係者を落胆させた。というのも、優勝馬のプロクターノットは騸馬で、未来(フューチュリティ)の優秀な種牡馬や繁殖牝馬を見出すという企てが失敗したからである。 その後、3歳になってプロクターノットはケンタッキーダービーでハナ差の2着に敗れた。サルヴェイターは3歳時に8戦して7勝した。破った馬の中にはベルモントステークス優勝馬のエリック(Eric)もいて、サルヴェイターは1889年の年度代表馬に選出された。ただし、この年ただ1度の敗戦ではプロクターノットに先着を許している。サルヴェイターは1890年にも年度代表馬に選ばれ、種牡馬になると、フューチュリティステークス優勝のサヴェーブル(Savable)などを出した。サルヴェイターは後に競馬の殿堂入りを果たした。一方のプロクターノットは1891年に病死した。
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