第一条を制限する試み
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/26 21:34 UTC 版)
「ロボット工学三原則」の記事における「第一条を制限する試み」の解説
第一条では、人間への積極的な危害はもちろん、人間に危害が及ぶのを看過することも禁じている。しかしこのことが、人間がある目的のためにあえて危険に身をさらす必要が生じた際に問題を引き起こすこととなり、そのため第一条の制限が試みられたケースが存在する。 『われはロボット』の一編『迷子のロボット』では、超光速航法(ハイパースペース・トラベル)の研究が行われている小惑星「ハイパー基地」において、人間の作業員が有害な放射線に短時間ながら身をさらす必要が生じた際に(ロボットの陽電子頭脳は放射線に対して人間以上の脆弱性を示すため代行できない)、放射線の感知能力を持つNS-2型ロボットが、自身の破壊も顧みず作業員を「救助」しようとして作業を阻害する事態が続発した。そのため、第一条後半の危害看過禁止の部分を削除した改造型NS-2ロボットが製作された。この改造は最高機密としてスーザン・カルヴィンもあずかり知らぬところで行われており、改造NS-2の一体が逃亡して通常型NS-2に紛れ込む事件が起こった際に、初めてその事実を知らされたカルヴィンは「優れた能力を持つロボットを低劣な人間に隷従させているのは第一条のみであり、その制限など論外」と非難した。実際に問題の改造NS-2は自分の優秀性を誇示してあざ笑うかのように人間達を翻弄し続けたが、最後にはカルヴィンの策略に敗れて発見・破壊された。 ロボット長編2作目『はだかの太陽』の舞台となった宇宙国家ソラリアでは、子供は全て厳格な産児調整の下に生まれた後、養育施設におけるロボット保育に委ねられていた。しかし三原則に従うロボットには子供の将来のためにあえて厳しくあたるというしつけの概念が理解できず、子供が過保護になってしまう問題があり、その対策として第一条をある程度弱めることが検討された。またあるロボット工学者は、第一条の間隙を突いてロボットの軍事利用(すなわちロボットに他国の人間を殺させること)を画策していた。しかし、人間ひとり当たり1万体という超過密ロボット社会であるソラリアにおいて、ロボットに人間に危害を加える可能性を与えようとすることも、そして与えようとする人間も到底受け容れられるものではなかった。 『夜明けのロボット』では、R・ジスガルドが地球人の銀河系再植民計画について「ロボットに依存して衰退しているスペーサーの轍を踏まないために、地球人はたとえ危険や困難が大きくともロボットの助け無しで開拓を行うべき」と語っており、こうした将来や多数の安全・利益のために現在の小さな危害をあえて看過するという考えは、後述の第零法則にもつながっている。
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