積分方程式論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/24 03:42 UTC 版)
コンパクト作用素の重要な性質に (λK + I)u = f の形の線型方程式の解の存在性が有限次元の場合におけると同様に振舞うことを主張するフレドホルムの交代定理がある。これによりフリジェシュ・リース (1918) によるコンパクト作用素のスペクトル理論が従う。これによれば、無限次元バナッハ空間上のコンパクト作用素 K は、0 を含む C の有限部分集合かあるいは集積点のみからなる C の可算無限集合のいずれかをスペクトル集合に持つことが示される。さらにいえば、いずれの場合においてもスペクトル集合の非零元は K の重複度有限なる固有値である(つまり、任意の複素数 λ ≠ 0 について K − λI の核は有限次元)。 コンパクト作用素の重要な例に、ゴルディング不等式とラックス-ミルグラムの定理に並ぶソボレフ空間のコンパクト埋め込みがあり、楕円型境界値問題をフレドホルム積分方程式に読み替えることができて、そのときに解の存在性とスペクトル特性はコンパクト作用素の理論から従う。特に、有界領域上の楕円型境界値問題は無限に多くの孤立した固有値を持つ。ひとつの帰結として、剛体は固有値によって与えられる孤立した周波数でのみ振動し、任意に高い振動周波数が常に存在することがわかる。 バナッハ空間からそれ自身へのコンパクト作用素全体は、その空間上の有界作用素全体の成す多元環の両側イデアルを成す。実際、ヒルベルト空間上のコンパクト作用素全体は極大イデアルを成し、それによる商多元環(カルキン代数と呼ばれる)は単純環である。
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