病源因子産生の調節
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/06/30 14:57 UTC 版)
ボルデテラ属菌の付着因子や毒素の多くは、二成分制御系 (two-component regulatory system) であるBvgASによって産生が制御されている。この制御機構について知られている事のほとんどは気管支敗血症菌の研究によって得られたものであるが、BvgAS系は百日咳菌、パラ百日咳菌、気管支敗血症菌のいずれにおいても存在しており、相変異や表現型調節の要因となっている。 BvgSは膜貫通センサーキナーゼで、 ヘリックスターンヘリックスを持つ細胞内タンパク質であるBvgAをリン酸化することで外部刺激に応答する。in vitroの実験系において、リン酸化を受けるとBvgAはBvgシステム特異的なプロモーター配列に結合しやすくなり、転写を増強するようになる。 BvgAS系の制御下にある毒素や付着因子のほとんどはBvgが活性化状態(リン酸化BvgAが豊富な状態)において産生される。一方で、基本的にBvgが不活性の状態で産生される遺伝子もあり、特にフラジェリン遺伝子、flaAがそれにあたる。Bvgによる抑制性の制御はbvgAの下流に存在する624塩基長のオープンリーディングフレームの転写産物であるリプレッサー、BvgRによって引き起こされる。少なくとも、いくつかのBvgRによる抑制を受ける遺伝子のコーディング領域に存在する認識配列にBvgRは結合する。このタンパク質の認識配列への結合は転写量を減ずる。 生理的条件におけるBvgSへの刺激が何であるかは知られていないが、in vitroにおいて数ミリモーラーの硫酸マグネシウム、ニコチン酸、26℃以下の低温いずれかによってBvgAS系は不活性となる。 気管支敗血症菌における、Bvg系の活性化状態が中間レベルとなるBvgS遺伝子の一塩基変異の発見は、リン酸化BvgAの濃度が中間的な条件でのみ転写されるBvgAS制御性遺伝子の存在を明らかにした。この中間的な形質は野生型の気管支敗血症菌を中間レベルのニコチン酸を含む培地で培養する事により再現できる。以上のような条件ではBvgが活性化状態において転写される病原因子の一部のみが産生されることから、二成分制御系が環境に対して1か0ではなく、連続的に反応している事を示唆される。
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