産褥期
胎児は妊娠の一時期までは生存不能 2、その後は生存可能 1といわれる。その区分は、胎児が母体外でも独立に生存しうる時、通常は妊娠継続期間 3が28週間を超えた時に起こる。妊娠がこれ以上長く続いた時、(生きている、あるいは死んだ)胎児の娩出は出産 4の際に起こる。また早期胎児死亡と結びついた早期の娩出を妊娠中絶 5(§604参照)と呼ぶ。出産後約6週間(これは子宮が正常の大きさを取り戻す期間であり、妊娠の確率が低い時期であるが)は産褥期 6と呼ばれる。
- 1. 生存可能なviable(形);生存可能性viability(名)。
- 2. 生存可能性を決める最短期間は国によって様々で20~28週の間にあるが、世界保健機構(WHO)は28週を基準期間とするよう勧告している。一般に、妊娠期間は最後の月経last mensesの開始から計算される。これは、受胎の瞬間から計算される真の妊娠継続期間true duration of pregnancyと区別して、慣用的妊娠継続期間conventional duration of pregnancyといわれる。
- 4. 胎児の娩出の実際の過程は分娩delivery, parturitionと呼ばれるが、それは陣痛laborの終了を意味する。出産confinementはこれに加えて胎盤placentaの分離または排出(あるいは後産afterbirth)を含む。
- 5. 妊娠中絶abortion(名):妊娠中絶するabort(動);流産を起こすabortifacient(形、名としても使われる);中絶医abortionist(名):人工妊娠中絶を実行する医師。日常的には、中絶という語は自然妊娠中絶(604-1)の対概念として人工妊娠中絶(604-2)の意味で用いられることが多い。
- 6. 産褥puerperium(名);産褥のpuerperal(形)(424-4参照)。
産褥
(産褥期 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/05 15:39 UTC 版)
産褥(さんじょく、英: puerperium)とは、日本語の直接の意味としては、出産のとき産婦の用いる寝床のことで、転じて出産およびその後の数週間のことを指す[1]。妊娠および分娩によってもたらされた母体や生殖器の変化が、分娩の終了(医学的には分娩第3期、いわゆる後産期終了)から妊娠前の状態に戻るまでの期間のこと[2]を「産褥」「産褥期」と呼ぶ。
この時期の女性を褥婦(じょくふ)または産褥婦(さんじょくふ、英: puerperant)という。期間は一般に6週間から8週間といわれているが、個人差や出産ごとでも異なることがある。この期間、妊娠時から急速に体内濃度が高くなっている体内ホルモンのプロラクチンが乳腺を刺激して乳腺葉を発達させ、オキシトシンは乳腺筋肉を刺激して乳汁を分泌させる。これらが闘争欲や遁走欲、恐怖心を減少させ、母性行動へ誘導する。
産褥期には体に以下のような諸症状が現れる。これらが生活に影響を与えるほど悪化し、または異常に進行して「病気」とされた場合を産褥病という。主には以下のものがあるが、発症の程度や期間にも個体差があり、無発症の場合もある。
- 手足の浮腫 - 分娩直後。妊娠中は体内の血液量が通常の1.5倍ほどに増えているが、これが出産により一気に失われたために起きる体の一時的な反射反応。また授乳が始まっても水分バランスがくずれて発症することがある。
- 乳汁の分泌開始 - 分娩からおよそ3日後から
- 産褥熱 - 分娩後の10日以内の2日以上にわたる38度以上の高熱が続く発熱症状。感染症の一種。
- 後陣痛
- 産褥性心筋症 - 分娩後2〜20週の間にみられる鬱血性心筋症。原因は不明とされる。
- 子宮口や腟腔の復古 - およそ4週間ほどかかるが、分娩のため妊娠前の状態には完全には戻らない[3]。
- 悪露の排出 - およそ4週間ほどかかる。下り物とは異なる。大きな傷が体内にあり出血や感染の危険がある時期である。
- 子宮の急激な縮小(子宮復古) - およそ6週間ほどかかる。
- 体重の減少
- その他の身体の全般にわたる大きな変化
また、前出のようにホルモンの体内濃度が急激に変化するため心理的不安定を伴うとされる。主には以下のものがある。
これには、生活環境の変化や育児へのプレッシャー、育児環境への不安、育児疲れ、孤独感、焦燥感、自責感などからのストレスも複合要因としてあげられる。
この産褥期を経て母体は妊娠前の正常な体へ戻っていく。主に減少した体重からの回復期にあたるため、これを古来日本語で「産後の肥立ち」という。肥立ちが悪いとの表現は、なかなか回復できない、あるいは産褥症状が続いている女性を指したものである。
出典・脚注
関連項目
外部リンク
産褥期
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/24 22:26 UTC 版)
第3期が終了すると後陣痛とともに子宮復古がはじまり産褥となる。分娩後3日ほどで乳汁の分泌が始まる。
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