生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律とは? わかりやすく解説

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生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/16 04:06 UTC 版)

生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律(せいしょくほじょいりょうのていきょうおよびこれによりしゅっしょうしたこのおやこかんけいにかんするみんぽうのとくれいにかんするほうりつ)とは、2020年令和2年)12月4日に成立した日本法律(令和2年法律第76号)である。国会議員が自ら発議した法律(議員立法)であり、秋野公造古川俊治石橋通宏梅村聡伊藤孝恵の5人が発議した[1][2][3]。本法は、「長年手つかずであった不妊治療関連法制の第一歩」[4]と評されている。本法は、後述のとおり公布から施行までの期間が短いため、施行前であっても、生殖補助医療を受けようとする日本人およびその配偶者ならびに日本国内に居住する者の意思決定に大きな影響を及ぼす。


  1. ^ a b 生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律案:参議院”. www.sangiin.go.jp. 2020年12月6日閲覧。
  2. ^ a b 参法 第203回国会 13 生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律案”. www.shugiin.go.jp. 2020年12月6日閲覧。
  3. ^ a b 衆議院法務委員会ニュース”. 衆議院. 2020年12月7日閲覧。
  4. ^ 2020年(令和2年)12月2日の衆議院法務委員会における伊藤孝恵の答弁。
  5. ^ 嫡出子と非嫡出子との区別自体は、本記事最終変更時現在の日本に限らず、時代的にも地理的にも広く用いられてきたが、世界的・歴史的にみれば多様な性自認の存在を認識する人が増加する傾向にあり、性的に多様な(異性婚に限らない)配偶関係の法的承認が進む傾向もある。本文の記載は、日本でも時代が下るにつれて通用性を減じる可能性がある。
  6. ^ 夫は精巣を持っていないので、夫と子との間に血縁関係がないことは明白である。
  7. ^ 最高裁判所平成25年(許)第5号同年(2013年)12月10日第三小法廷決定・民集67巻9号1847頁。
  8. ^ 最高裁判所平成24年(受)第1402号平成26年(2014年)7月17日第一小法廷判決・民集68巻6号547頁。
  9. ^ 最高裁判所平成8年(オ)第380号平成12年(2000年)3月14日第三小法廷判決・集民197号375頁。
  10. ^ ただし、その逆の「認知によって生じるのは非嫡出子の親子関係である。」という命題は成り立たない。法律婚をしている父母が子を認知したときは、その認知の時から嫡出子の身分を取得し(民法789条2項。この制度を「認知準正」という。)、この子について父母が嫡出子出生の届出をしたときは、その届出は、認知の効力を有する(戸籍法62条)。認知準正によって嫡出子になるはずの子を、「推定されない嫡出子」という。つまり、認知によって嫡出子の親子関係が生じる場合もある。
  11. ^ 最高裁判所昭和35年(オ)第1189号昭和37年(1962年)4月27日第二小法廷判決・民集16巻7号1247頁。なお、本判決は、大審院の判例が、非嫡出子を出産した女性は認知によって初めて母となるのか(大審院大正10年(1921年)12月9日判決・民録27輯2100頁、大審院大正12年(1923年)3月9日判決・民集2巻143頁)、出産によって当然に母としての責任を負うのか(大審院昭和3年(1928年)1月30日判決・民集7巻12頁)、一貫性を欠いており、学説も分かれるという状況の下で、最高裁判所の見解を明らかにしたものである(真船孝允「母と非嫡出子間の親子関係と認知の要否」424頁、昭和37年度最高裁判所判例解説民事篇、423-427頁)。
  12. ^ 最高裁判所平成18年(許)第47号平成19年(2007年)3月23日決定・民集61巻2号619頁。前掲昭和37年(1962年)最高裁判決は、子を出産した女性が母とならない例外があり得るかのような説示をしていたが、平成19年(2007年)最高裁判決は、子を出産した女性は一律に母となると説示している。
  13. ^ 民法に明文の規定はないが、夫又は妻が死亡したときは、婚姻関係は当然に終了する。夫婦間の離婚訴訟が夫又は妻の死亡により当然に終了するのは(人事訴訟法27条)、そのためである。したがって、この事案の子は夫妻の嫡出子にはならず、出生と同時に妻の子になるが、夫の法律上の子になるためには認知を必要とする。
  14. ^ 日本国法務省(2003年)「「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療により出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する要綱中間試案」に関する意見募集」、2003年7月(2020年12月8日閲覧)
  15. ^ 日本国法務省「法制審議会 -民法(親子法制)部会」(2020年12月13日閲覧)及びそこに掲載された議事録を参照。
  16. ^ 婚外性交を生殖補助医療の代替として用いた事例の報告として、週刊女性(2020年)「SNS取引の危険、精子提供を「受けた女性」と「提供した男性」のドロドロ愛憎劇」週刊女性PRIME(ウェブサイト)、週刊女性2020年6月2日号(2021年1月25日閲覧)がある。
  17. ^ 参議院事務局「参議院会議録情報」に会議録へのハイパーリンクが掲載されている。
  18. ^ 2020年11月19日の参議院法務委員会における秋野公造の答弁。なお、本条が適用されなくても、卵子を提供した女性が母になるという結論が論理必然的に導かれるわけではない。秋野が言うとおり、本条が前掲平成19年(2007年)最高裁判所決定を変更するものでないのだとすれば、同判例によってやはり出産した女性が母とみなされるというのが論理的帰結になる。
  19. ^ 2020年2月25日の法制審議会民法(親子法制)部会に対して事務局が提出した「嫡出推定制度の見直しに伴う生殖補助医療により生まれた子の父子関係等の規律の可否についての検討」と題する資料(以下「法制審議会事務局(2020年)」という。)の10-11頁には、同旨の議論が紹介されている。秋野公造も、2020年11月19日の参議院法務委員会において同旨の答弁をした。
  20. ^ 発議者の一人である秋野公造も、2020年11月19日の参議院法務委員会で同旨の答弁をした。ただし、「自分の子なのに養子にしなければならない」という場面は、他にもある。例えば、非嫡出子である未成年の連れ子を配偶者の養子にしたいときは、配偶者とともに連れ子と養子縁組をしなければならない(民法795条1項本文)。
  21. ^ 前掲平成25年(2013年)最高裁判所判決は、「夫が自らを父であると主張するならば、その主張を認めよ。」と述べたにとどまるが、本条は、夫が父ではないと主張すること自体を封じる。
  22. ^ 2020年12月2日の衆議院法務委員会における古川俊治の答弁。なお、2003年5月20日の法制審議会生殖補助医療関連親子法制部会第16回会議でも、端的に規定する立場が甲案と呼ばれ、間接的に規定する立場が乙案と呼ばれ、甲案と乙案との優劣が議論された。法務省民事局(2003年)「法制審議会生殖補助医療関連親子法制部会第16回会議(平成15年5月20日開催)」(2020年12月11日閲覧)に掲載された議事録を参照。
  23. ^ 岡口基一(2017年)『要件事実マニュアル第5版第5巻』601頁が引用する各文献。
  24. ^ 発議者の解釈によると、本法9条により、母と被告との間の血縁関係の有無は問題にならなくなった。古川俊治は、2020年11月19日の参議院法務委員会において、代理母の夫がお父さんになってしまう、という趣旨の答弁をした。
  25. ^ この要件を欠くと、嫡出否認の訴えの利益がなくなる。その場合には、原告が親子関係不存在確認の利益を有することを基礎付けるため、戸籍に親子として記録されていること等を主張する必要がある。
  26. ^ 理論上は、「母が原告との婚姻期間中に被告を懐胎したこと。」が本来の請求原因事実であり、本文の出生日要件は上記の婚姻中懐胎要件を推定するものにすぎない。学校などの試験では、「本文の出生日要件と、この注の婚姻中懐胎要件との、いずれかがあることが請求原因となる。」旨を説明する必要がある。しかし実務的には、本文の出生日要件がない場合には、原告は親子関係不存在確認の訴え(又は認知無効の訴え)を提起すれば足り、後述の出訴期間を遵守できる場合には、被告がこの注の婚姻中懐胎要件(嫡出推定の抗弁)の立証に成功するときに備えて、予備的に嫡出否認の訴えを提起すればよい。出訴期間を遵守できない場合には、原告は予備的であろうと嫡出否認の訴えを提起することができない。いずれにせよ、この注の婚姻中懐胎要件を原告が主張立証する実益はない。
  27. ^ 法制審議会中間試案の第2について、2003年(平成15年)6月6日の衆議院内閣委員会において参考人深山卓也が示した立証責任に関する見解を採り、かつ、夫は子の懐胎後も本法10条の同意をすることができると解釈すると、要件事実は本文のように書ける。なお、夫の同意が民法776条の嫡出の承認にも当たる場合は、それだけで嫡出否認権が消滅するので、そもそも母が被告を生殖補助医療により懐胎したか否かを問題とする必要がなくなる。
  28. ^ 後述する発議者の解釈を前提とする。
  29. ^ この要件事実も、理論上は再抗弁になるというだけで、実務上の意味は乏しい。実務的には、この要件事実の立証に成功する見込みがあれば、原告は端的に親子関係不存在確認の訴えを提起すればよく、そうすることで、出訴期間の遵守や抗弁の成否が争点から事実上外れるという実益もある。
  30. ^ 2020年(令和2年)12月2日の衆議院法務委員会において、石橋通宏は「二年で結論を得ていきたい」と答弁した。
  31. ^ 2020年(令和2年)11月19日の参議院法務委員会においては、委員である山添拓及び参考人である長沖暁子が批判的な意見を述べ、同年12月2日の衆議院法務委員会においては、参考人である石塚幸子及び才村眞理、委員である藤野保史が批判的な意見を述べた。国会外でも、末富芳(2020年11月29日閲覧)など。
  32. ^ 【写真・図版】生殖補助医療法案を共同提出し、記者会見する秋野公造・公明党参院国会対策委員長(左から2人目)ら参院与野党会派の議員ら=2020年11月16日午前、国会内”. 朝日新聞デジタル. 2020年12月5日閲覧。
  33. ^ 例えば、才村眞理(2005年)「子どもの出自を知る権利の必要性―生殖補助医療と養子制度より―」、帝塚山大学心理福祉学部紀要、第1号、帝塚山大学心理福祉学部、2005年、29-39頁、久慈直昭=伊東宏絵=井坂惠一(2016年)「提供精子を用いた人工授精(AID)における告知と出自を知る権利」、心身医学、56巻7号、2016年7月1日、705-711頁。
  34. ^ a b c 2020年12月2日の衆議院法務委員会における古川俊治の答弁。
  35. ^ 2020年11月19日の参議院法務委員会における秋野公造の答弁。
  36. ^ 例えば、日本障害者協議会(2020年)「「生殖補助医療等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律案」に関する緊急要望」、日本障害者協議会ウェブサイト、2020年11月25日(2020年11月30日閲覧)。他にも、障害者インターナショナル日本会議(2020年12月2日閲覧)などの障害者支援団体が同様の懸念を表明した。
  37. ^ a b 2020年12月2日の衆議院法務委員会における石橋通宏の答弁。
  38. ^ 例えば、荒中(2020年)「「生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律(案)」に対する会長声明」、日本弁護士連合会ウェブサイト、2020年11月12日(2020年11月29日閲覧)。
  39. ^ オーストラリアビクトリア州の立法例について、日比野由利(2018年)「生殖補助医療における「出自を知る権利」をめぐる法制度―イギリスとオーストラリアの比較―」140-142頁、社会保障研究、3巻1号、2018年、137-147頁。
  40. ^ 前掲荒(2020年)。
  41. ^ 法制審議会事務局(2020年)10頁は、個々の生殖補助医療行為の適法性が、母子関係の確定とは別個の問題であることを前提としている。
  42. ^ 中間試案補足説明10頁
  43. ^ 2020年12月2日の衆議院法務委員会における大口善徳の質問。
  44. ^ 前掲大口善徳の質問に対する古川俊治の答弁も同旨であろう。
  45. ^ なお、妻が出産した後は、子の出生後に夫が嫡出を承認したときは否認権を失うと規定する民法776条の適用が問題となる。
  46. ^ 2020年12月2日の衆議院法務委員会における秋野公造の答弁。
  47. ^ 前掲中間試案補足説明11頁。2020年12月2日の衆議院法務委員会における秋野公造の答弁も同旨。
  48. ^ 死後懐胎の事案である前掲平成18年(2006年)最高裁判所判決は、同条の適用を検討すらしていない。
  49. ^ 2020年11月19日の参議院法務委員会における古川俊治の答弁。
  50. ^ 前掲時事通信社(2020年)。


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