独占禁止法上の問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 03:39 UTC 版)
損失補填行為が独禁法違反になるかどうかが問題となる。具体的には、同法19条の不公正な取引方法に該当するかが問題である。この点について、公取委平成3年12月2日勧告審決は、野村證券が実施した損失補填について、「正常な商慣習に照らして不当な利益をもって、競争者の顧客を自己と取引するように誘引しているものであって、不公正な取引方法の第9項に該当し、独占禁止法第19条の規定に違反するものである」とした。排除措置(今後同様の違法行為が起こらないようにするための措置)は、野村證券が損失補填が独禁法に違反すること及び今後同様の行為を行わないことを自社の役員・従業員・顧客に周知徹底すべきこと並びに今後損失補填を行ってはならないことである。なお、野村證券以外の大手証券会社3社に対しても同日付けで同内容の審決が下されている。 独占禁止法2条9項3号は「不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、又は強制すること」であって公正な競争を阻害するもののうち公正取引員会が指定するものを不公正な取引方法と定める。それを受けて公正取引委員会告示「不公正な取引方法」(一般指定)9項は「正常な商慣習に照らして不当な利益をもって、競争者の顧客を自己と取引するように誘引すること」を規定している。本件審決は、損失補填が同9項に該当するとしたものである。 また、前節(3.2) で挙げた野村證券損失補填代表訴訟においても独禁法に違反するかどうかが判断された。最高裁は同法19条違反は認めたものの経営判断原則により損害賠償責任は否定された。
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