特徴とその評価
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/03 06:30 UTC 版)
『新定画帖』は『Text books of Art Education』:フレーリッヒ,スノーの両名の著作に基づき編修されたと言われており、欧米の図画教育の影響を多く受けている。1932年(昭和7年)に『小学図面』が発刊されるまで使用された。 この『新定画帖』と『Text books of Art Education』の比較と分析については金子一夫が詳しく研究している。そうした研究によると『Text books of Art Education』は子供が読むために作られたものであるのに対し、『新定画帖』は教師が教授するときに役立つことを考え作られていることが指摘されている。つまり、二つは編集の視点が違うことがわかる。また、『新定画帖』は「教授法」を重視している教科書であるといえる。 主たる特徴は次のようなものがあげられる。 子どもの成長に応じて、鉛筆(鉛筆画)と筆(毛筆画)をともに用いるという考えを示した。 『新定画帖』に載っている臨画、写生画、記憶画、考案画は学齢に従い割り当てられている。(低学年は記憶画、高学年は写生画を重視。) 学齢に従って道具や器材の教育方針を定めている。(1年では色鉛筆の使用を、3年では尺度、三角定規の使用を、4年ではコンパスの使用を定めている。) これは個々の分野をお互いに関連させてまとまったものにすることを重んじた教育方針であることを示している。 1907年(明治40年)頃、『新定画帖』が出版されるまでの日本の図画教育は、物体をよく観察し正確に描くことを目的として実用的なものだった。そのため内容は、手本の絵を忠実に模写する臨画が主だった。『新定画帖』の最大の特徴は、そこから脱却し児童の発達段階に見合った教材と指導法を提示、体系化した点にある。 しかし、この教科書は臨画主義を根本から否定するものではなかったため、後年山本鼎を代表とする自由画教育(児童に自由に絵を描かせる)運動から批判を受ける。
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