片麻痺のマネジメント
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/15 09:10 UTC 版)
片麻痺を起こす疾患の頻度としては脳血管障害が圧倒的に多く、急性期治療によって予後が全く異なる可能性もあることから前述のように救急室では神経診断学とは異なるアプローチを行う場合が多い。まずはバイタルサインの確認をし、蘇生法にて対応する。脳幹病変の有無を評価し疑わしければ気管内挿管を施行する。麻痺側にて静脈路確保を行うと、脳血管障害では感覚障害の合併があるため、静脈炎の発生や点滴漏れに気がつかない場合があるため健側で静脈路確保を行う。健側で静脈路確保しなければならない状況としては片麻痺など感覚障害を伴う場合と乳癌にて腋窩リンパ節郭清を行った場合などがあげられる。腋窩リンパ節郭清を行った場合は静脈炎からSIRSなどに進展するリスクがあると考えられている。血栓溶解療法の適応からはずれないようにするためにNGチューブやフォーレーカテーテルの挿入は控え、動脈血採血も行わない。できるだけ速やかに頭部CTを行い、脳出血の有無を確認する。心電図などのルーチン検査はCTを優先し、空き時間を利用して行うべきである。また錐体路徴候の確認なども空き時間を利用して行う。なお、厳密には低血糖やその他の原因にて片麻痺が起こることもあり得るが、低血糖の場合は意識障害がある場合がほとんどであるし、その他の疾患に関しても脳血管障害が否定できてからでも遅くはない場合が多い。 脳出血のマネジメント 救急室で行うべきこととしては、出血部位の同定を含めた診断とヘルニアや水頭症といった合併症の評価である。緊急手術の適応となる脳出血には被殻出血、小脳出血、皮質下出血、視床出血があげられる。被殻出血、小脳出血、皮質下出血では血腫除去術、視床出血では脳室ドレナージが標準的な術式である。手術適応は施設によっても異なるが、被殻出血の場合は血腫量が31ml以上の時や意識障害があるとき、脳の圧迫所見が強い時は緊急手術となる。小脳出血では血腫径が3cm以上のとき、意識障害(特にJCS III-100以上)があるとき緊急手術となる。皮質下出血の場合は血腫量が30ml以上の時、意識障害が昏迷以上であるとき、正中偏位が1cm以上あるとき、中脳周囲槽の変形があるとき緊急手術となる。視床出血では脳室穿破や水頭症が認められるとき緊急手術となる。 脳梗塞のマネジメント 脳血管障害でCTにて出血が認められなければ脳梗塞の可能性が高い。発症から3時間以内であれば血栓溶解療法で症状が改善しえるので適応の評価を行わなければならない。病歴からアテローム血栓性などの病型診断も行い、MRIまたはMRAにて発症時期も特定していく。血栓溶解療法は適応基準、慎重投与などが定められているため、かならず専門家にコンサルトしてから血栓溶解療法は行うべきである。この際、適応から外れる行為として観血的な処置があるためにNGチューブやフォーレーカテーテルの挿入は控えておいた方がよい。
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