無矛盾性の強さの階層
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/01 07:39 UTC 版)
巨大基数公理に関する目覚しい知見の一つとして、それらが無矛盾性の強さ(英語版) から見ると厳密な線形順序に従うという経験則がある。すなわち、次のことについてこれまで反例は知られていない。A1 と A2 をそれぞれ巨大基数公理とすると、以下の三つのうちのどれかが(排他的に)成立する: ZFC から「ZFC + A1 が無矛盾である必要十分条件は ZFC + A2 が無矛盾であること」が証明される。 ZFC + A1 から ZFC + A2 が無矛盾であることが証明される。 ZFC + A2 から ZFC + A1 が無矛盾であることが証明される。 一つ目が成り立つ場合、A1 と A2 は無矛盾性同値(英語版)であるという。二つ目の場合は A1 は A2 よりも無矛盾性が強いという(三つ目の場合はその逆)。もし A2 が A1 よりも強いなら、ZFC + A1 から A2 の無矛盾性を証明することはできない。これは例え ZFC + A1 自体が無矛盾であるという仮定(無論、実際にもそうだとして)を加えても変わらない。このことはゲーデルの第二不完全性定理から導かれる。 巨大基数公理が無矛盾性の強さで線形に整列するという経験則は、文字通り経験則であって定理ではない。そもそも巨大基数的性質とは何かという定義さえ合意が存在しないので、普通の意味では証明以前の問題なのである。また、個別の事例については、上に挙げた三つの関係のうちどれが成り立つのか全てが明らかになっている訳ではない。サハロン・シェラハは「これを説明する定理が何かあるのか、それとも我々の物の見方が思ったよりも画一的なだけなのか?」と問い掛けている。一方、ヒュー・ウッディンは彼のΩ論理(英語版)における中心的な未解決問題であるΩ予想(英語版)を仮定した状況下でこの事実を導いてみせている。他に特筆すべきこととして、組合せ論的な命題の中に、なんらかの巨大基数と無矛盾性の強さが丁度同値になるものが多数存在することも挙げられる。つまり、中間などではなく、丁度巨大基数と一致するのである。 なお、無矛盾性の強さの順序は、巨大基数公理に対する最小の証人のサイズの順序とは必ずしも一致しない点に注意が要る。例えば、膨大基数(英語版)の存在性は超コンパクト基数(英語版)の存在性よりも無矛盾性の強さでは遥かに強いが、しかし両者の存在を仮定すると、最初の膨大基数は最初の超コンパクト基数よりも小さい。
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