火星氷床
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/01 14:20 UTC 版)
火星氷床 火星北極圏にある、火星極冠深く刻まれた谷が縞模様を成す中央部の氷床と、周辺部に散在する氷帽から成る。バイキング1号によって1998年6月に撮影された画像。 火星上の氷床および極冠も、地球上のそれと同じく、降雪などによって大気中から水分が徐々に地表部に蓄積され、圧密され続けることによって成長し、形成されたものと考えられている。また、北極冠の表面250メートルほどの氷の成層構造が過去およそ500万年にわたる気候変動を微細に記録していることが分かってきた。 火星の氷床は火星氷床(英語: Martian ice sheet, etc.)とも呼ばれ、過去およそ500万年の間(探査で判明している期間中)には高緯度地域以外に伸長している時期があったとは言え、現存するものは全て極冠に含まれるため、火星極冠(英語: Martian ice cap, Polar ice cap of Mars)と半ば同義のようにも扱われる。火星にある「氷」の主成分が氷(凍結した水)とドライアイス(凍結した二酸化炭素)のいずれであるかを巡って過去に長く論争されてきており、「氷床」とは呼んでも但し書きを要するものであったが、20世紀末前後に行われたマーズ・サーベイヤー計画による探査の結果、二酸化炭素はごくわずかに表層部10メートル程度を覆うのみであってほとんどは水で形成されていることが判明している。 火星は平均的な軌道離心率が0.1前後と大きいため、日射量の振れ幅もまた大きく、俯瞰で見たとき縞模様に見える、氷床に深く刻まれた谷(■右の画像を参照)はこれによって形成されたと見られている。この谷をさらに拡大して見ると、細かな断層を形成していて、それらは過去500万年の日射量・軌道離心率・自転軸傾斜角の変化によく対応していることも分かってきている。日射量が多くなると水分の蒸発が進み、結果として氷中での塵の蓄積が増大することが考えられるし、日射量の増大によって火星全体で砂嵐の発生頻度が上がり、その結果として他地域から運ばれてくる塵の蓄積も推定される。
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