潜血反応
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/14 19:20 UTC 版)
便中の微量な血液の有無を調べる検査。大量の出血がある場合にはタール便(上部消化管出血)、血便(下部消化管出血)として肉眼で指摘できるが、微量の場合はこの検査によらないと判別できない。以前はヘモグロビンの持つペルオキシダーゼ活性 (鉄と反応する)を利用する 化学法 (グアヤック法・オルトトリジン法など) を用いていたが、これではヒト以外の血液(食物中に含まれる魚肉・獣肉の血液)や一部の薬物にも反応してしまい、偽陽性が問題となった (この偽陽性を回避するためには3日間程度の食事制限をする必要があった)。このため現在では通常ヒトヘモグロビンにのみ反応する免疫法 (ヒトヘモグロビンを抗原とする抗体を用いる。ラテックス凝集反応など) を用いて検査する。 消化管出血は大きく上部消化管 (食道・胃および十二指腸) からのものと、下部消化管 (小腸と大腸) からのものに分けられる。ヘモグロビンは胃でヘムとグロビンタンパクに分離され、十二指腸でグロビンタンパクは消化分解されるが、ヘムは便として排泄される。このためヘムのペルオキシダーゼ活性を利用する化学法では、どの部位からの出血も検出する。一方免疫法はグロビンの持つ抗原性を利用するため、上部消化管からの出血は基本的に検出しない。すなわち化学法は上部消化管出血に対する感度が高く、免疫法は下部消化管出血に対する特異度が高いことになる。上部消化管内視鏡が普及した状況下では、臨床症状から上部消化管出血が疑われれば内視鏡検査を実施できる施設が多く、化学法の利点は小さい。 通常は感度を高めるために2日法(2日分の便をそれぞれ検査する)が推奨される。この検査で1回でも潜血反応陽性の場合、潰瘍、腫瘍(特に胃癌や大腸癌)、炎症性疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎)などが存在する可能性があり、内視鏡検査あるいは造影X線検査を実施することが推奨される。このうち最も重要な疾患は大腸がんであるが、早期がんの場合便潜血検査が陽性になることは少なく、進行がんでも必ずしも陽性になるとは限らない。このため、便潜血反応が陰性であるからといって安心というわけではない。これらのことからがん年齢の人については、便潜血検査が陰性でも大腸内視鏡検査を受けることには意味がある。また、因果関係は不明であるが便潜血検査結果陽性者のうち大腸内視鏡検査受診までの期間が10か月を超えると大腸ガンのリスクが高くなっていたとの報告がある。
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