漁業権問題と行政の対応
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/11/07 08:59 UTC 版)
だが、この事業に対しては福岡県・佐賀県の有明海漁業協同組合が激しい反対運動を展開した。 有明海はノリ養殖の一大産地であり、堰建設によって河水流量が減少してノリ生育に重大な支障が出るとして1978年(昭和53年)に漁連は警固公園にて反対集会を開いた。翌1979年(昭和54年)4月に建設工事が着工されたが漁連は大挙して建設現場に押し掛け、関係者に13時間抗議活動を行う実力行使に出て着工を延期させた。だがこの間1979年6月と1980年(昭和55年)8月の2度に亘って大水害が流域を襲い、両者は歩み寄る気配を見せた。1980年11月建設省・公団と漁連は交渉のテーブルに着き『筑後大堰建設事業に関する基本協定書』を締結した。この中でノリ漁への支障を無くす為に、特に渇水期において維持流量を放流してノリ生育に必要な栄養塩の補給を公団に義務付けた。 これに基づき建設省(現国土交通省九州地方整備局)は維持流量の確保を図る為松原ダム・下筌ダムの再開発を図ってノリ生育期の維持流量確保を図るべく再開発事業を行い、要請を受けた九州電力株式会社も大山川ダムの改築を行い流量確保に努めた。公団はこの間も漁連との補償交渉を継続し、粘り強い交渉の結果1984年(昭和59年)に漁業補償は全て解決した。現在は特に水量が少なくなる冬季に、漁連の要請によって松原・下筌・大山川3ダムと筑後大堰は維持流量を放流しておりノリ漁への支障は出ていない。 河川開発においては漁業権との対立は避けて通れない問題であるが、度重なる交渉を重ね行政と漁連が連携して漁業資源の保護に努めているモデルケースとも言える。
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