法官「屁の父」の物語
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/25 10:08 UTC 版)
「千夜一夜物語のあらすじ」の記事における「法官「屁の父」の物語」の解説
教王(カリーファ)ハールーン・アル・ラシードの時代のシリアのトラブルズの町にケチで有名な法官(カーディー)がいた。ある日、裁判を有利にはからってもらおうとした人が、法官に嫁を世話した。法官はケチだったので、披露宴もなく、食事は1日1回で、玉葱1個とパン1切れであった。嫁は耐えられず、3日で離縁になった。しばらくして、また法官は別の乙女と結婚したが、やはりケチに耐えられず3日で離縁になった。このようなことが続き、町中、法官と結婚しようという女はいなくなった。 ある日、法官が町の外を歩いていると、モースルから来たと言う美しい女と出会った。その女は法官と結婚し、玉葱1個とパン1切れの食事にも文句を言わなかった。しかし、翌日、法官が仕事に行き家を留守にすると、女は家の中を探し、法官の金庫を見つけ、金庫の隙間からモチ付の棒を入れ、中の金貨を何枚か取った。女はその金貨で豪華な料理を買ってきて、召使の黒人女とおいしく食べた。法官が家に帰ると、女は「近くに住む親戚から、お祝いの料理をもらった」と法官に言い、法官にも料理の残りを食べさせた。それから毎日、女は法官の金庫から金貨を盗み、それで豪華な料理を買い、法官には「もらったものだ」と説明していた。 ある日、女は法官のために蚕豆、えんどう豆、白いんげん、キャベツ、レンズ豆、玉葱、にんにくなどのごった煮を作った。それを食べた法官は、腹にガスがたまり、妊婦のような腹になった。女は、「全能のアラーが、男を妊娠させた」と騒ぎ、法官が大きなおならをすると、近所で生まれたばかりの赤ん坊を取り出し、「赤ん坊が生まれた」と法官に言った。 法官は、困惑し、「お釜を掘られて妊娠した」などと言われることを恐れ、妻子を家に残し、ほとぼりが冷めるまでダマスに隠れることにした。しかし、法官の噂は、尾ひれが付いてダマスまで広がっていた。数年して、法官がトラブルズに帰って見ると、子供たちが「屁の父」の話をしており、法官のことが忘れられていないことを知った。法官が子供に詳しく聞くと、あの女は、法官に離縁された乙女たちの復讐をするために法官に近づいたものであって、子供が生まれたというのは、嘘であったということを初めて知った。愕然とした法官が家に行って見ると、家は廃屋になっており、誰もおらず、金庫もなくなっていた。 類似の話:歴史的な放屁
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