治療概要
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/09/30 14:55 UTC 版)
転位がない場合には非伸縮性粘着テープによる整復固定、アルミニウム副子固定、ギプス固定などにより保存的治療を行う。保存療法では中手指節関節、近位指節間関節ともに90度屈曲位で矯正して固定する。伸筋より屈筋の方が強いため、90度屈曲位での固定は他の指の動きを制限せず、転位の可能性も低い。第2 - 第5指の腱は共同腱といい、4つの筋肉が1つの腱となって手首部に繋がるので、屈曲させておくことで、他の指を動かした時に固定した骨折部が動くことを防ぐ。 保存療法での固定には4 - 6週間程度を要するが、期間は年齢、骨折の性質、部位、固定法によって異なり、変形、短縮した場合は再骨折が起きやすいため、より期間を要する。骨間筋、指屈筋腱、手根伸筋などの作用で頸部以遠の骨が掌側に転位すると背側凸の屈曲変形が生じるので、その場合は矯正固定する。 掌側部骨皮質の挫滅や変形が顕著な場合には整復位の保持が困難であるため、中手指節関節、骨折部周囲軟部組織への負担を考慮し、ピンニング術などの経皮的骨接合術(釘、鋼線などの固定具で経皮的に骨折部を繋ぐ手術)を行う。キルシュナー鋼線による経皮的鋼線刺入固定法、中手骨髄内釘固定法 intramedullary nailing of metacarpal、ポリ-L-乳酸(PLLA)ピンによる中手骨髄内固定法などがある。麻酔を施してX線透視下に整復術を行った後でアルミニウム副子固定もしくはギプス固定を施す。 徒手整復が困難もしくは不可能であれば、再転位や指の伸展障害を考慮して観血的整復内固定術(切開して骨折部を展開し、鋼線、プレートなどの固定具で骨折部を繋ぐ手術)を行う。ロープロファイルプレートおよびスクリュー low profile plate and screw system による治療などがある。 この他、複雑骨折では感染症予防のための抗生物質投与などを行う。また、いずれの場合もX線で骨癒合を確認する。 骨折型、粉砕の程度、軟部組織の損傷の程度によっては、術後に指拘縮が起こりやすい。この予防として中手指節関節屈曲位での可動域訓練などの運動療法を行う。30度以上の角状変形を残すと中手指節関節の伸展位拘縮となる。低出力超音波パルス(LIPUS)などによる治療も有効とされる。 発生部位に関わらず、整復が不完全だと運動障害や運動痛を残す。中手骨骨折では回旋転位を合併しやすいが、この転位では中手指節関節から回旋することにより、手を握る動作をしたときに指が重なり合うクロスフィンガーが認められることがあり、その場合は手術による矯正が必要になる。
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