水名とは? わかりやすく解説

水名

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/18 22:05 UTC 版)

水名(すいめい、英語: hydronym)は、水域の固有名である。

hydronymの語源は、ギリシア語ὕδωρ(ラテン翻字: hydor:「水」) とὄνομα(ラテン翻字: onoma:「名前」)である。また水名学(すいめいがく、英語: hydronymy)は地名学(地名の分類学的研究)の一分野であって、水域の名前の研究であり、それらの名前の起源とそれらがどのように歴史を通じて移転されていくのかの研究である。水名には河川湖沼、さらには海洋要素の名前を含む場合がある。

言語項目としての水名は、ほとんどの地名より保守的で変化しにくい。

ある土地に新たにやって来た人々は、しばしば、自分たちの言語で名付け直す(rename)より、既存の水名をそのまま維持しようとする[1]。例えば、ドイツライン川ドイツ語の名前でなくケルト語の名前である[2]アメリカ合衆国の川名ミシシッピ川(Mississippi)はフランス語英語名ではなくアニシナーベ語(Anishinaabe)[3]の名前である[4]。小さな川のローカル名はそうでもないが、特に大河川の名前はよく保存される。

したがって、水名学は過去の文化的相互作用、人口移動、改宗または、より古い言語を再構築するためのツールとなりうる[5]。例えば、歴史学教授ケネス・ジャクソン英語版(エディンバラ大学)はアングロサクソンイギリスへの侵入の物語と(侵入前の)土着文化の痕跡に適合するものに対して河川名のパターンを特定した[6]。彼のブリテン島の地図はイギリスの居住地域を主要な3地域に分割していた。 東向きに流れている川の流域ではブリテン名(British name)は最大の川に限定してしか残っておらず、サクソン人居住地域では古くから、かつ濃密にブリテン名が残っていた。第3の地域である中央高地(highland spine)ではブリテン名は最小の小川にさえ残っている。

多くの場合、所与の水域は、その岸に沿って住んでいる異なった人々によって与えられた、いくつかの完全に異なる名前を持つことになる。例えば、チベット文字རྫ་ཆུ་ワイリー方式rDza chu; 蔵文拼音:Za quとタイ語: แม่น้ำโขง [mɛ̂ː náːm kʰǒːŋ]はそれぞれ、メコン川チベット語名とタイ語名である。

様々な言語に由来する水名は、一つの共通の語源を共有している可能性がある 。例えば、 ドナウ川(Danube)、ドン川(Don)、ドニエストル川(Dniester)、ドニプロ川(Dnieper)とドネツ川(Donets)の名前はすべて「川」を表すスキタイ語(現代オセチア語 don「川の水」:を参照)を含んでいる[7]

地名が水名になる可能性がある。例えば、リフィー(Liffey)川は LipheまたはLifeと呼ばれる、流れている平野の名前から採られた。川自体はもともとRuirthechと呼ばれていた。珍しい例は Cam川である。それはもともと Granta川と呼ばれていたが、Grantebrycgeの町がケンブリッジ(Cambridge)になった時 、川の名前が地名に一致するように変更されたものである[8][9]

脚注

  1. ^ Julie Tetel Andresen, Phillip Carter (2015年). “Languages In The World: How History, Culture, and Politics Shape Language”. John Wiley & Sons. p. 227. 2015年12月31日閲覧。
  2. ^ Klement Tockner, Urs Uehlinger, Christopher T. Robinson (2009年). “Rivers of Europe”. Academic Press. p. 216. 2015年12月31日閲覧。
  3. ^ オジブウェー語を参照
  4. ^ Arlene B. Hirschfelder, Paulette Fairbanks Molin (2012年). “The Extraordinary Book of Native American Lists”. Scarecrow Press. p. 260. 2015年12月31日閲覧。
  5. ^ The Editors of Encyclopædia Britannica. “Toponymy”. Encyclopaedia Britannica. 2015年12月31日閲覧。
  6. ^ Jackson, Language and History in Early Britain, Edinburgh, 1953:220-23, summarized in H.R. Loyn, Anglo-Saxon England and the Norman Conquest , 2nd ed. 1991:7-9.
  7. ^ Mallory, J.P. and Victor H. Mair. The Tarim Mummies: Ancient China and the Mystery of the Earliest Peoples from the West. London: Thames and Hudson, 2000. p. 106. Абаев В. И. Осетинский язык и фольклор (Ossetian language and folklore). Moscow: Publishing house of Soviet Academy of Sciences, 1949. P. 236
  8. ^ Byrne, F. J. 1973. Irish Kings and High-Kings. Dublin. p.150
  9. ^ Dublin Castle – Prehistoric Dublin – Chapter 1 アーカイブコピー - ウェイバックマシン

関連項目

参考文献

  • Robert S.P. Beekes, "River", Encyclopedia of Indo-European Culture英語版, pp. 486–87.
  • H.L. Mencken, "The American language: An inquiry into the development of English in the United States", 1921, 2nd ed., rev. and enl. 3. Geographical Names

水名

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/02/13 14:21 UTC 版)

ミウス川」の記事における「水名」の解説

「ミウス」はヴォルガ地域からウラル地域まで広く伝播した地名であり、イラン系語源(参考:タジク語: Мис「」)を持つ。それはこの地域におけるイラン系民族(スキタイサルマタイ)の歴史的な移住適合する。この仮説裏付けるのは、青銅器時代ドンバスにお ける銅鉱山広範な伝播物語事実である。 第2の説によれば、水名の基礎にはチュルク語<<миус>>「ミウス」が横たわっており、音の異なったバリエーション多くチュルク系言語見られるその意味は「角(つの)」、「角(かく)」「角度」である。角(かく)は古代異な民族によって川の合流点土地名付けられた。我々のミウス川に関して言えば、おそらくクリンカ川との合流点地域であろう第3の説では単語«миюш»はチュルク人言葉で«топь»「沼沢地泥濘」, «грязь»「泥、ぬかるみ、泥地」を意味した。それは明らかに泥濘繁茂した葦によって特徴づけられる川の氾濫原を指している。

※この「水名」の解説は、「ミウス川」の解説の一部です。
「水名」を含む「ミウス川」の記事については、「ミウス川」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「水名」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「水名」の関連用語

水名のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



水名のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの水名 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのミウス川 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS