殺菌剤としての逆性石鹸
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/09 22:59 UTC 版)
逆性石鹸のうち、塩化ベンザルコニウムおよび塩化ベンゼトニウムが、外用の消毒薬として器具や手などの消毒に、塩化セチルピリジニウムがトローチやうがい薬などに配合されて、口腔や気道の殺菌に用いられる。 逆性石鹸は、一般的な細菌、菌類(真菌)、原生生物、一部のウイルスなど、広範な微生物に対して殺菌作用を示し、その効果には持続性がある。ただし芽胞に対しては無効であり、真菌、緑膿菌、結核菌、エンベロープを持たないウイルスに対する殺菌作用は弱い。E. H. Spauldingが提唱した「消毒薬の殺菌力の区分」では、3段階(高水準・中水準・低水準)のうち、低水準のグループに分類されており、消毒対象としては、環境・器具・手指・粘膜の消毒。また対象微生物は、一般細菌に使用可能だが、真菌に対しては高濃度長時間処理が必要となり、芽胞・結核菌・ウイルスには効果がない。 また上述したように、普通石鹸や汚れとなる有機物と混合すると、殺菌力が低下するため注意が必要である。特に薬用石鹸(普通石鹸に他の殺菌成分を配合したもの)との混同から、逆性石鹸に洗浄力を期待した使い方をするなどの誤った使い方がなされることもあるため、逆性石鹸以外の名称を用いる場合もある。さらに近年は、他の消毒薬と同様、使用中の逆性石鹸の中から緑膿菌やセラチア菌などの細菌が検出される例も報告されており、適切な使用、保管が重要であることが再認識されている。 逆性石鹸は水溶液として用いる他、エタノールと混合して速乾性の手指消毒薬(スクラブ)として用いられることもある。スクラブは速乾性で水がなくても使用可能であることに加え、エタノールと逆性石鹸という、作用点が異なる二種類の消毒薬によって相乗的な殺菌効果を得ることができ、しかも逆性石鹸の殺菌力が持続することから、有用な消毒薬として用いられている。特に、塩化ベンザルコニウムではエタノール溶液が、水溶液とともに医療分野などで利用されている。
※この「殺菌剤としての逆性石鹸」の解説は、「逆性石鹸」の解説の一部です。
「殺菌剤としての逆性石鹸」を含む「逆性石鹸」の記事については、「逆性石鹸」の概要を参照ください。
- 殺菌剤としての逆性石鹸のページへのリンク