歴史改変の手段としてのタイムトラベル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 18:40 UTC 版)
「歴史改変SF」の記事における「歴史改変の手段としてのタイムトラベル」の解説
この時期にはタイムトラベル小説として、L・スプレイグ・ディ=キャンプの『闇よ落ちるなかれ』が書かれている。これはマーク・トウェインの『アーサー王宮廷のコネチカット・ヤンキー』と似ており、アメリカ人の学者がベリサリウス率いる東ローマ帝国軍に侵攻されつつあるイタリアの東ゴート王国に行くという話である。この作品では、タイムトラベルした主人公が歴史改変を招く。しかもこの主人公は積極的に歴史を変えようとする(それに対してトウェインの主人公は歴史改変に失敗する)。 歴史の分岐(あるいは改変)原因としてのタイムトラベルは、その後もよく使われる設定となった。Ward Moore の Bring the Jubilee では、南北戦争で南軍が勝った世界に住む主人公がタイムトラベルし、ゲティスバーグの戦いで北軍を勝利に導く。 タイムトラベルによる歴史改変によって単に歴史が分岐するのではなく、完全に未来が置き換わるという設定の場合、未来の文明が歴史改変によって失われるのを防ぐ機関のような設定がよく使われる。例えば、ポール・アンダースンのタイムパトロールものが有名である。 タイムパトロールは深刻な道徳的ジレンマを生じる。アンダースンの短編「滅ぼさるべきもの」の中で、不法時間旅行者の影響によって第二次ポエニ戦争にカルタゴが勝ち、ローマが破壊されてしまう。結果として20世紀は全くことなる様相となる。「いいとか悪いとかではなく、単に全く違う」。主人公であるパトロールエージェントはその時代に戻り、無法者と戦い、歴史を元に戻す。しかし、それによって実在していた歴史全体が再び完全に破壊されるという代償を払わなければならない。何十億もの生命と別の何十億もの生命を主人公1人が秤にかけてどちらを取るかを決めなければならない。 タイムトラベルを扱った小説が、全て歴史改変SFというわけではない。改変される可能性を無視する場合もあるし、因果効果によって時間旅行者の行動の結果として彼の覚えている未来も同時に変わるという設定もある(例えば、ハリイ・ハリスンの『テクニカラー・タイムマシン』)。同様のアプローチの例としてマイケル・ムアコックの『この人を見よ』では、主人公が紀元28年の聖地にキリストに会いに行くが、結局自分が記憶している通りにキリストを演じることになる。
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