正しき裁き人とキリストの騎士
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/29 21:05 UTC 版)
「ヘントの祭壇画」の記事における「正しき裁き人とキリストの騎士」の解説
「正しき裁き人」のパネル。オリジナルのパネルは1934年に盗難にあっており、現在のパネルは複製画である。 「キリストの騎士」のパネル。 「神秘の子羊の礼拝」の左パネルには騎乗する人々が描かれている。これらの人々たちが聖書におけるどのような人物なのかが、それぞれのパネルのフレームの銘に記されている。「神秘の子羊の礼拝」の左隣のパネルには「キリストの騎士 (CHRISTI MILITES)」という銘が、さらにその左のパネルのには「正しき裁き人 (IUSTI IUDICES)」という銘がある。他のパネルに描かれた集団とは異なり正しき裁き人には聖人がおらず、この理由について美術史家たちが研究を重ねてきた。さまざまな説のなかで、依頼主のヨドクス・フィエトがヘントの参事官という地位にあったことを意味するためのパネルだったという説が有力となっている。 「正しき裁き人」のパネルには騎乗する10名の人物が描かれており、そのうち手前から三番目と四番目の人物はフーベルトとヤンの肖像画だとされている。この説の根拠としては、ヤンが1433年に描いた自画像ともいわれる『ターバンの男の肖像 (en:Portrait of a Man (Self Portrait?))』と風貌がよく似ていることが挙げられている。そしてこのヤンの肖像画といわれる人物像と、すぐ近くに描かれている人物の特徴がよく似ていることから、ヤンの兄フーベルトの肖像画ではないかといわれている。『ヘントの祭壇画』と『ターバンの男の肖像』はほぼ同じ時期に完成した作品で、『ヘントの祭壇画』に描かれたヤンといわれる人物像はかなり風貌が若く見えるが、どちらもよく似た被り物 (en:Chaperon (headgear)) を頭に固く巻きつけている「正しき裁き人」のパネルのヤンとフーベルトの肖像画といわれる人物像は、後世にファン・エイク兄弟を描くときの見本となり、16世紀の芸術家ドミニクス・ランプソニウス (en:Dominicus Lampsonius) など、多くの芸術家の作品に再利用されている。また、描かれているのはファン・エイク兄弟ではなく、手前から順にブルゴーニュ公フィリップ2世、フランドル伯ルイ2世、ブルゴーニュ公ジャン1世、ブルゴーニュ公フィリップ3世とする説もある。 「キリストの騎士」のパネルには9名の騎士が描かれている。とくに手前で十字旗を持つ武装した3名の騎士は、聖マルティヌス、聖ゲオルギオス、聖セバスティアヌスに擬せられる。さらに9名の騎士のモデルとして、ダヴィデ、アレクサンドロス大王、アーサー王ら中世ヨーロッパで畏敬された「九大英雄」という説や、『ヨハネの黙示録』(19:11 - ) に記された白馬にまたがる天の軍勢とする説などがある。
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