標準語に入った薩隅方言
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 06:32 UTC 版)
標準語となった薩隅方言としてよく「おい」、「こら」と運動部などで体罰の隠語として使われる「ビンタ」の3つがあげられる。 明治時代の日本の警察は薩摩閥の力が強く、警察官は元薩摩藩士が多かった。「おい」「こら(「これは」=「あなた」の意)」、また「こらこら」(呼び掛けの「ねえ」の意)は彼らが市民の注意をひく際、話しかける際に用いた薩隅方言の言葉で、これが定着して、今日の標準語で広く使われるようになった。当時は、薩摩出身の警官から薩摩弁で「こら」と言われることに威圧感を感じていた市民が多く、後に相手の態度が悪いと叱る際に使われるようになったとされる。明治期当時の用例では、警官と女性の恋愛を描いた泉鏡花の作品『夜行巡査』にも次のようにして登場している。 だしぬけにこら! って.mw-parser-output ruby.large{font-size:250%}.mw-parser-output ruby.large>rt,.mw-parser-output ruby.large>rtc{font-size:.3em}.mw-parser-output ruby>rt,.mw-parser-output ruby>rtc{font-feature-settings:"ruby"1}.mw-parser-output ruby.yomigana>rt{font-feature-settings:"ruby"0}喚(わめ)かれましたのに驚きまして、いまだに胸がどきどきいたしまする — 泉鏡花『夜行巡査』、1895(明治28)年4月「文藝倶樂部」 また、『ビンタ』は薩隅方言では単に頭を指す意味に過ぎないが、その昔に大学の運動部や下士官がいた鹿児島県出身者が指導と称して後輩などの頬っぺたを引っぱたいた事を取り違えて定着したといわれる。鹿児島人は、気心がしれた相手や目下の人間に対してなんらかの動作を求める際に、関連の名詞などを無造作に言い放つ傾向が強い。他にも同様に薩隅方言の単語が別な意味として定着した例があると思われる。
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