植物界の場合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 16:57 UTC 版)
植物界における散布体(Disseminule、diaspore)というのは、種子や胞子を含む構造で、実際に散布の場合の単位となるものを指す。 胞子はたいていはそのまま散布される。種子の場合、もし、果実が開いて種子を放出する、あるいは結果として果実から単独の種子が出るものであれば、その場合は種子そのものが散布体である。そのようなものも多いのであるが、そうでない場合も多々ある。一般には、たいていの場合、散布体を種子と言い習わしている。以下のような場合がある。 果実から種子が出る事なく、果実そのものが散布体となるもの。果実が肉厚でなく、熟すると脱落するものである。いわゆる痩果というのはほとんどがこれに当たる。キク科、キンポウゲ科などに多く見られる。 果実が種子を含んだ部分に分断して散布体となるもの。ヌスビトハギのように中に一列の種子を含んだ果実が分節的に分かれるものや、ダイコンソウのように果実が種子一個を含んだ心皮に割れるものなど。 花の構造が散布体に参加するもの。イタドリでは萼片が果実を包んで、そのヒレで風に乗って飛ばされる。 花序の一部が散布体の構造に参加するもの。例えばイネ科では小穂が散布体になる場合がよくある。スゲ属では果実を果胞が包んだものが散布体となる。 これらは、どのような方法で散布されるかによって区別することも可能である。例えばキョウチクトウ科のテイカカズラと、キク科植物のタンポポとは、ともに綿毛の生えた種をつけ、風に乗って散布されるが、これらの綿毛のついたものは、テイカカズラでは種子であるが、タンポポのそれは種子に見えるが実は果実である。このように、種子散布を考える場合、実際にその対象になるのは散布体である。これら二つは、散布体そのものは全く異なるものであるが、散布の方法は同じである。 また、散布の様式に関連して鉤を持つものをcentrospore、粘液を持つものをglacospore、肉質で食用にされるものをsarcosporeなどの名もある。
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