棹と胴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 14:00 UTC 版)
三味線本体の寸法は義太夫の三味線とほぼ同じで、棹材には稽古用として花梨、舞台用で高級なものになると紅木を用いる。後者の方が材質が固い為音質が良く、棹の摩耗(勘減り)が少ない。通常三分割できる構造になっており、継ぎ目に「金ホゾ」と呼ばれる金細工を施してある場合がある。 胴材には花梨を用いる。大きさは五分を標準とし、四分大、六分大のものもあるが、明確な規格はない。内部に「綾杉」という綾目模様が彫り込んであるものが高級品で、この綾杉を施していない胴を「丸胴」と呼ぶ。金ホゾと綾杉のいずれも、音響工学的には無根拠だが、音質が違うと感じる奏者が多い。 基本的には注文生産であり、奏者と職人の人間関係が大切であるとされる。原木よりも職人の技術料が高価である他、高い信頼関係があれば随意割引きなどが行われるため、市場価格は一概に言えない。ごく一般的に言えば、紅木・丸胴・金ホゾなしでおよそ20万円から40万円ほどである。中級クラスで50万~80万円、非常に高級なものでは500万円を超えることもあるが、そのような場合、音質よりも工芸品的価値が優越することが多い。また、一般に運指による棹の摩耗や皮の張り替えによる胴の摩耗が激しいため、ヴァイオリンにおけるストラディバリウスのようなヴィンテージは存在しない。すなわち、よく言われる「一生もの」の三味線というものは存在しないと言っても過言ではなく、三味線は消耗品であり、買い換えるものであるというのが津軽三味線における常識である。 専業の演奏家では特に消耗が激しく、数年おきに買い換えることが多い。このため、演奏家が舞台で現実に使用する三味線は、おおむね200~300万円程度が上限であると言われるが、個人により差が大きい。
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