格の語尾と表示順序
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/31 18:24 UTC 版)
「ラテン語の文法」の記事における「格の語尾と表示順序」の解説
ラテン語の名詞には単数・複数の2つの数があり、それぞれが「格」(英case、独Kasus、ラテン語:casus)と呼ばれる異なる語尾の形をとって変化する。ラテン語には主格・属格・与格・対格・奪格・呼格・地格という7つの格がある(下の表の「Wheelock式」の表示順序)。格にはそれぞれに異なる機能と意味がある。 文法書などでの格の表示順序は国によって違いが見られる。イギリスなどの国では、主格・呼格・対格・属格・与格・奪格となる(下の表でBrの欄)。アメリカでは、Gildersleeve and Lodgeの文法書(1895、GL)に従う伝統的な順序では、属格が2番目となり、奪格が最後に置かれ、主格・属格・与格・対格・呼格・奪格となる(下の表でGLの欄)。これよりも広く通用しているのがWheelockの文法書(1956年初版、2011年第7版、Wh)に従う順序で、GLのうち、最後の呼格と奪格の順序が逆になる(下の表でWhの欄)。日本で定着しているのがこの最後のWheelock式である。下の表で他の2つに切り替えるには、GLとBrの菱形マーク(上下三角マーク)をクリックすると順序が変わる。 格の名称単数意味複数意味用法WhGLBr主格(Nominative) rēx (一人の)王が rēgēs 王たちが 主語(~が) 1 1 1 属格(Genitive) rēgis 王の rēgum 王たちの 所有(~の) 2 2 4 与格(Dative) rēgī 王に rēgibus 王たちに 間接目的語(~に) 3 3 5 対格(Accusative) rēgem 王を rēgēs 王たちを 直接目的語(~を) 4 4 3 奪格(Ablative) rēge 王とともに rēgibus 王たちとともに 手段・由来など 5 6 6 呼格(Vocative) rēx 王よ! rēgēs 王たちよ! 呼びかけ 6 5 2 以上の6つの格の他に、第7の格として地格(locative)があり、町の名前や小さな島の名前、domus(「家」)などの単語で用いられる。「場所」を表す格である。例:Rōmae「ローマで」、domī「家で」。ただし、この格を持つ名詞はごく一部に限られる。 上の表から分かるように、-ēs(複数主格と対格)や-ibus(複数与格と奪格)のような語尾は複数の格にまたがって共通の語尾となっている。ラテン語では、単語の機能が語尾で決まるため(英語のように語順ではなく)、rēgēs dūcuntと言えば、「王たちが導く」の意味にも、「彼らが王たちを導く」の意味にも読めることになる。ただし、実際の用例では、-ēsの語尾が主格か対格かは文脈から明らかであり、こうした意味の取り違えが起きることは稀である。
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