核兵器原料としてのプルトニウム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 21:25 UTC 版)
「プルトニウム」の記事における「核兵器原料としてのプルトニウム」の解説
プルトニウムを生産する際に239Pu のみ生成させることはできず、必ず複数の同位体が混在してしまう。前述の通り 240Pu は極めて容易に自発核分裂を起こすが、核兵器において 240Pu が一定量以上存在すると、自発核分裂により核兵器の内部に設計よりも早く核分裂連鎖反応が始まる部分が生じ、そのエネルギーでプルトニウム全体が核分裂を始める前にばらばらに吹き飛んでしまう(過早爆発)。爆縮レンズを用いたインプロージョン型核兵器では 240Pu が10 %程度以上混入すると過早爆発となるが、ガンバレル型の場合は 240Pu が1 %前後混入しただけで過早爆発が起きる。このため、プルトニウムを用いる核兵器ではインプロージョン型設計の採用が必須となる。実際に、第二次世界大戦中のアメリカ合衆国による原子爆弾開発(マンハッタン計画)では、ガンバレル型プルトニウム原爆シンマンも設計されていたが、過早爆発を防ぐのは困難として開発が中止されている。結局、核兵器原料とするプルトニウムは 240Pu の含有量を10 %以下とする必要があるが、これは軽水炉では実現困難なため黒鉛炉を使用して生産される。 240Pu の混入という課題は核兵器開発において2つの側面を持つ。一つは混入による過早爆発対策として爆縮レンズ技術を開発する必要が生じ、マンハッタン計画に遅れと障害をもたらしたこと、もう一つは爆縮レンズ技術自体が極めて高度な技術であり、容易に獲得できるものではないため、他国の核開発における技術障壁になったことである。なお 239Pu の同位対比が約90 %を越えるプルトニウムは兵器級プルトニウム(英語版)と呼ばれる。アメリカ国内で生産された兵器級プルトニウムは、工場によりプルトニウムの同位体比が下表のようになっていた。 製造工場 Pu 238 {\displaystyle {\ce {^{238}Pu}}} Pu 239 {\displaystyle {\ce {^{239}Pu}}} Pu 240 {\displaystyle {\ce {^{240}Pu}}} Pu 241 {\displaystyle {\ce {^{241}Pu}}} Pu 242 {\displaystyle {\ce {^{242}Pu}}} ハンフォード・サイト 0.05 %以下 93.17 % 6.28 % 0.54 % 0.05 %以下 サバンナ・リバー・サイト 92.99 % 6.13 % 0.86 % ロッキーフラッツの土壌 極微量 93.6 % 5.8 % 0.6 % 極微量
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