書簡のあて先
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/25 01:04 UTC 版)
『ヘブライ書』は特定の状況下に置かれたキリスト者のグループにあてて書かれた。『ヘブライ書』を注意深く読むと本書のあて先となった人々が以下のような特徴をもっていたことをうかがい知ることができる。 七十人訳聖書の形で旧約聖書を知る改宗者であること。 13:14と13章の罪のリストからは都市生活者であること。 10:32-34からは一度迫害にあったこと。その迫害はそれほど過酷なものではなかった(12:4)が、再び迫害にあう可能性が予見されている。(12:1-3、13:12-13) 一部の人々は神殿における儀式にはもう参加していない(10:22)。いまだに儀式に参加している人たちはそれによって自らの信仰が揺らいでいる。 おそらくユダヤ教から改宗したキリスト教徒でありながら、再びユダヤ教へ戻ることを考えている人々であろう。著者はユダヤ教の動物の犠牲はキリストの十字架での犠牲の後では意味を持ち得ないことを強調し、「幕屋の外で」(すなわちユダヤ教を離れて)キリストに従うことを求めている。 13:24で著者はイタリアの信徒たちからの挨拶を伝えている。これは本書がイタリアで書かれたことをうかがわせる。あるいは逆に、イタリアにいる信徒たちの集団に、イタリアから書簡の発信地に移住してきた信徒たちが挨拶を送っているのかもしれない。 ユダヤ人キリスト教徒にあてられたという説は有力ではあっても決して全ての人が認めているわけではない。本書は(このようなタイトルがつけられたことからもわかるように)2世紀以来、ユダヤ人キリスト教徒にあてられたと見られていた。
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