文献資料と歴史学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/03 14:32 UTC 版)
文献資料は歴史学研究における根本的な資料であり、われわれは歴史的事件や人物に関しての詳細を文献を通じて知ることができる。ただし、以下の点に注意しなければならない。 当時の人々にとって重大で書き留めておかなくてはならないと意識された事象・事物のみが記録され、すべての事象が記録されるわけではないこと。とくに、あまりにも日常生活に根ざして語るまでもなく当然視されていたような事象・事物(たとえば生業や衣食住、産育や排泄にかかわる事象など)は記録されず、記録されたとしても廃棄されてしまうケースが多いこと。 時代をさかのぼるほど、著述・編纂が為政者層、体制側、知識階級、有力者側、成人男性、都市住民に片寄る傾向があること。それゆえ、時代が古くなればなるほど、庶民、女性、子ども、地方の実態はつかみにくい傾向が生じる。また、つかみえた情報も著述・編纂にたずさわる階層の価値観を反映したものになりがちである。 記憶違いによる誤記や写本として流通する過程で生じる誤写、また、記録・書写の過程で作為による改変なども考えられること。 それゆえ、歴史事象の究明のためには、文献資料を互いに付き合わせて史料批判や文献学的な検討をおこなうだけでなく、絵画や写真などの図像資料、考古学的発見によって得られる遺構・遺物などの考古資料、長い間伝承されてきた風俗・習慣・伝説などの民俗資料(伝承資料)も視野に入れた論考が必要である。
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