改良条件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/18 14:26 UTC 版)
90年代後半から、これらの難点を解決する報告が相次いで発表された。 アリールホウ酸の使用 1997年、チャンら・エヴァンスら・ラムらの3グループから同時に、ハロゲン化アリールの代わりにアリールホウ酸を使用する改良条件が報告された。この場合溶媒はジクロロメタン、銅塩としては2当量程度の酢酸銅(II)がよく、ここにトリエチルアミンまたはピリジンを5当量程度共存させて反応を行う。反応は室温で進行し、加熱するとかえって収率が落ちる。これは溶媒に溶けた酸素が銅を再酸化し、反応サイクルを回すと考えられており、加熱によってこの酸素が逃げてしまうためと説明される。このため撹拌を激しく行い、空気を取り入れると効率が上がる。また酸素ガスを吹き込みながら反応を行うなどの改良法も報告されている。 カップリングの相手としては、フェノール類、チオール、一・二級アミン、アミド、含窒素ヘテロ環など幅広い基質が使用可能である。またアリールホウ酸でなく、ビニルホウ酸を用いたケースも報告されている。 配位子の使用 1999年、スティーヴン・ブッフバルトは1価の銅塩にジアミン系の配位子(フェナントロリン、trans-1,2-シクロヘキサンジアミンなど)を加えることにより、銅の使用量を基質の 5mol%程度にまで減らせることを示した。リン酸カリウムを塩基として用い、トルエン溶媒で 110 ℃ 程度の穏和な条件で反応が進行する。こちらもアリールアミン・アルキルアミン・含窒素ヘテロ環・フェノール類・チオールなど幅広い基質に適用可能である。 酢酸セシウムの使用 ヨウ化アリールのアミノ化に、2当量のヨウ化銅(I)と酢酸セシウムの組み合わせが有効であることが福山らによって示された。室温〜90 ℃ 程度の温度で反応が進行する。分子内反応でインドール・キノリン誘導体が効率よく合成できる他、分子間反応でも有用性が示されている。
※この「改良条件」の解説は、「ウルマン反応」の解説の一部です。
「改良条件」を含む「ウルマン反応」の記事については、「ウルマン反応」の概要を参照ください。
- 改良条件のページへのリンク