擬相対論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/04 01:00 UTC 版)
グラフェンの電気的特性は、伝統的なタイトバインディングモデルで説明される。このモデルでは波数 k {\displaystyle \mathbf {k} } の電子のエネルギーは次のように書ける。 E = ± γ 0 2 ( 1 + 4 cos 2 π k y a + 4 cos π k y a ⋅ cos π k x 3 a ) {\displaystyle E=\pm {\sqrt {\gamma _{0}^{2}\left(1+4\cos ^{2}{\pi k_{y}a}+4\cos {\pi k_{y}a}\cdot \cos {\pi k_{x}{\sqrt {3}}a}\right)}}} ここで γ 0 ≈ 2 . 8 e V {\displaystyle \gamma _{0}\approx 2{.}8\ \mathrm {eV} } は最近接原子にホップするエネルギー、格子定数 a ≈ 2 . 46 Å {\displaystyle a\approx 2{.}46\ \mathrm {\AA} } 。分散関係のプラスとマイナスの符号は、それぞれ伝導帯と価電子帯に対応している。伝導帯と価電子帯は、K-valuesと呼ばれる6点で接しているが、6点のうち独立なのは2点のみで、残りは対称性から等価である。K点の近傍ではエネルギーは波数に線形となるが、これは相対論的粒子の分散関係に類似している。さらに、格子の単位胞が2原子からなるため、波動関数は実効的に2スピノル構造まで持つ。結果として、低エネルギーで電子はディラック方程式と形式的に等価な方程式で書き表せる。さらにこの擬相対論的な記述はカイラル極限、すなわち静止質量 M 0 {\displaystyle M_{0}} がゼロの極限に制限されているため、興味深いさまざまな特性が生ずる。 v F σ → ⋅ ∇ → ψ ( r ) = E ψ ( r ) {\displaystyle v_{F}{\vec {\sigma }}\cdot {\vec {\nabla }}\psi (\mathbf {r} )\,=\,E\psi (\mathbf {r} )} ここで v F ≈ 10 6 m / s {\displaystyle v_{F}\approx 10^{6}\ \mathrm {m/s} } はグラフェンのフェルミ速度であり、ディラック理論の光速に代わるものである。 σ → {\displaystyle {\vec {\sigma }}} はパウリ行列のベクトルであり、 ψ ( r ) {\displaystyle \psi (\mathbf {r} )} は電子の二成分波動関数。 E {\displaystyle E} はエネルギーである。簡単に言うと、ディラックコーンの頂点における電子は、位置と運動量がある点に決定されるという、ハイゼンベルクの不確定性原理に相反してしまう状態になる。しかしながら相対論効果で、位置幅と運動量幅を大きくすることで不確定性原理の相反を回避しようとし、そのため電子の速度が急激に大きくなると考えれば良い。
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