抗動脈硬化作用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/14 14:19 UTC 版)
動脈硬化病巣の形成には血液中の単球に由来するマクロファージが重要な役割を果たしている。単球は血管壁に入り込んだ後にマクロファージへと分化し、細胞表面に発現したスカベンジャー受容体を介して酸化LDLの取り込みを行う。この取り込みに寄与するスカベンジャー受容体の代表的なものとしてCD36やクラスAスカベンジャー受容体(SR-A)が知られており、CD36はPPARγの活性化により発現が増強することが報告されている。大量のコレステロールエステルを取り込むことでマクロファージは細胞内に脂肪滴を蓄積した泡沫細胞に変化する。泡沫細胞が血管壁に蓄積すると血管壁が肥厚化するため、血管内腔が狭くなる。 しかし、実際にはPPARγアゴニストは動脈硬化を抑制する作用を示す。そのメカニズムの一つとして提唱されているのがコレステロール逆輸送系の賦活化である。これは組織あるいはマクロファージに発現するABCA1やABCG1とよばれる輸送タンパク質などの働きによりコレステロールを細胞外に排出する経路であり、脂質の沈着を抑制する。PPARγアゴニストによるABCA1の誘導には少なくとも2つの経路が提唱されており、1) PPARγへのリガンドの結合で核内受容体の一つであるLXRαが誘導されることによりABCA1の発現量が亢進するという経路と、2) PPARγが代謝酵素シトクロムP450の一つであるCYP27 (sterol 27-hydroxylase) の発現を誘導し、LXRαのリガンドであるオキシステロールを生成するという経路である。PPARγアゴニストの抗動脈硬化作用はいくつかの大規模な臨床試験でも検討されている。そのひとつとして2型糖尿病患者を対象に行ったPROactive試験が挙げられ、PPARγアゴニストであるピオグリタゾンを使用した患者群において心血管イベントが減少傾向を示している。また、CHICAGO試験ではピオグリタゾンの投与を受けた患者群において動脈硬化度の指標である内中膜複合体厚(IMT)が減少するという結果が得られている。
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