抗リウマチ薬とは? わかりやすく解説

疾患修飾性抗リウマチ薬

(抗リウマチ薬 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/18 15:23 UTC 版)

疾患修飾性抗リウマチ薬(しっかんしゅうしょくせいこうリウマチやく、英:Disease-modifying antirheumatic drugs、DMARDs)は、関節リウマチの病気の進行を遅らせるために使用される医薬品の総称であり、分子構造に一貫性があるものではない[1]。 この用語は、非ステロイド性抗炎症薬(炎症を治療するが、根本的な原因を治療しない薬剤を指す。NSAIDs)やステロイド(免疫反応を鈍らせるが、病気の進行を遅らせるには不十分)と対比して使用されることが多い。

抗リウマチ薬という用語は同様の文脈で使用されることがあるが、病気の経過に対する効果を主張するものではない[2]。 歴史的に同じグループの薬剤を指すために使用されてきた他の用語として、「寛解導入薬」(RID)および「遅効性抗リウマチ薬」(SAARD)がある[3]

用語

DMARDsという用語は、最初はその名の通り関節リウマチで使われていたが、現在ではクローン病エリテマトーデスシェーグレン症候群免疫性血小板減少性紫斑病重症筋無力症サルコイドーシスなど、さまざまな疾患で用いられている[要出典]

元々は、赤血球沈降速度の上昇、ヘモグロビン値の低下、リウマトイド因子値の上昇、最近ではCRP値の上昇など、疾患の根底にあると考えられている病変を示す検査値異常を低減させる薬剤を指す言葉として登場した[要出典]。最近では、骨や軟骨の損傷速度を減少させる薬剤を指す言葉としても使われている[要出典]

一部のDMARDs(プリン合成阻害剤など)は、弱い化学療法剤であるが、癌化学療法の副作用である免疫抑制を主な治療効果として利用している。

下位分類

作用機序による分類

免疫に対する作用の様式により、DMARDsは2種類に分類される[4]

  • 免疫調節薬(immunomodulaters)  正常の免疫能には影響せずに異常な免疫機能を正常化する薬剤
  • 免疫抑制薬(immunosuppressants)  すべての免疫機能を非特異的に抑制する薬剤

製造法などによる分類

DMARDsは、化学的に合成された従来の低分子量薬剤と、遺伝子工学的に製造された新しい生物学的薬剤に細分化される[5]

  • 化学合成(sDMARD)
    • 従来型合成DMARDs(csDMARDs)  従来の薬剤(メトトレキサート、スルファサラジン、レフルノミド、ヒドロキシクロロキン、金塩など)
    • 分子標的合成DMARDs(tsDMARDs)  生体内の特定の分子構造に作用する低分子量の薬剤
  • 生物学的製剤(bDMARD)  抗体医薬品や生体内の特定の受容体などの構造を模したタンパク質である薬剤

代替薬剤

DMARDsによる治療が失敗した場合、制御されていない自己免疫疾患を安定させるために、シクロホスファミドステロイドのパルス療法がしばしば実施される。重度の自己免疫疾患でシクロホスファミド療法が奏効しなかった症例を対象にした、骨髄移植臨床試験も行われている。さらに、DMARDsが無効な場合、NICEガイダンスでは、腫瘍壊死因子(TNF)阻害剤のトシリズマブなどを使用することができる。

DMARDsの併用は、併用する各薬剤を単独で投与する場合よりも少量で済むため、副作用のリスクを軽減できるので、しばしば実施される。

多くの患者は、NSAIDと少なくとも1種類のDMARDを投与し、時には低用量の経口グルココルチコイドを併用する。疾患の寛解が認められれば、通常のNSAIDsやグルココルチコイドによる治療は不要となり得る。DMARDは関節炎の制御に有用であるが、疾患を治癒させるものではない。そのため、DMARDで寛解や最適な制御が得られた場合は、薬剤を維持量に減量して継続することが多い。DMARDを中止すると、疾患が再燃したり、リバウンドフレア(急激な増悪)を起こす可能性があり、投薬再開時に疾患のコントロールが再び確立される保証はない。

参考資料

  1. ^ "disease-modifying antirheumatic drug" - ドーランド医学辞典
  2. ^ "antirheumatic" - ドーランド医学辞典
  3. ^ Buer, Jonas Kure (2015). “A history of the term "DMARD"”. Inflammopharmacology 23 (4): 163–171. doi:10.1007/s10787-015-0232-5. PMC 4508364. PMID 26002695. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4508364/. 
  4. ^ 第5章 抗リウマチ薬”. 日本リウマチ財団. 2021年3月25日閲覧。
  5. ^ Smolen JS, van der Heijde D, Machold KP, Aletaha D, Landewé R. Proposal for a new nomenclature of disease-modifying antirheumatic drugs. Ann Rheum Dis. 2014 Jan;73(1):3-5. doi: 10.1136/annrheumdis-2013-204317.

抗リウマチ薬

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/28 07:58 UTC 版)

関節リウマチ」の記事における「抗リウマチ薬」の解説

メトトレキサートMTXmethotrexate リウマトレックス関節破壊抑止するとしてほぼ第一選択として用いられ世界的に今日関節リウマチ治療の基幹となっている。元々、関節リウマチとは原因不明疾患であって関節破壊に対して痛みに対して対症療法を行うしかできなかったが、この薬剤によって関節破壊進行遅らせることができるようになった重篤な副作用としては骨髄抑制間質性肺炎があり、75歳上の高齢者への投与推奨されていない。まれであるが死亡例もある。なお、抗がん剤として使用する場合とは投与法異なっており、使用量も少ない。 スルファサラジン(SASP: アザルフィジン)MTX適応がない患者対す第二選択薬として用いられることが多い。 ブシラミンBUCリマチルMTX適応がない患者対す第二選択薬として用いられることが多い。 タクロリムスTAC: プログラフ)MTX適応がない患者対す第二選択薬として用いられることが多い。腎障害高血糖注意要するトファシチニブ(ゼルヤンツ)・バリシチニブ(オルミエント)・ペフィシチニブ(スマイラフ)ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤免疫シグナル伝達するJAK阻害するイグラチモド(ケアラム、コルベット) レフルノミドアラバミゾリビン(ブレディニン) ヒドロキシクロロキン(プラケニルリソソーム内への集積によりリソソーム機能抑制する思われる網膜障害リスクが高い。 ミノサイクリン抗生物質であるが関節リウマチ効果があり、米国ガイドラインでも推奨されている。日本での保険適用はない。 免疫抑制薬であるアザチオプリンイムラン)、シクロスポリンネオーラル)も効果示されているが、日本では保険適応はない。

※この「抗リウマチ薬」の解説は、「関節リウマチ」の解説の一部です。
「抗リウマチ薬」を含む「関節リウマチ」の記事については、「関節リウマチ」の概要を参照ください。

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