投資家保護措置
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/17 08:10 UTC 版)
証券化するとき投資家保護のため、オリジネーターが対象資産を処分することができないように、対象資産をオリジネーターおよびその利害関係者から分離する必要がある。そのため、オリジネーターが自ら証券を発行するのではなく、オリジネーターから資産を譲り受けた上でSPVが証券を発行する。この仕組みを倒産隔離という。 この倒産隔離を法的にどのように実現すべきかについては諸説があるが、原資産の売却が真正売買(true sales)となっているかが問題だといえる。 真正売買の要件としては、当事者の意思、 第三者対抗要件の具備、 価格の適正性、 会計上のオフバランス などが挙げられる。 具体的な手法としては以下のようなものが用いられる。 SPV方式 証券化対象資産を保有することのみを目的とする法人(Special Purpose Vehicle。Special Purpose Companyとも。)を設立し、その出資者に議決権を与えないことで、対象資産とオリジネーターを切り離す。これをより徹底するため、出資者をケイマン諸島などに設立する持株会社とすることもある。 信託方式 オリジネータが信託委託者、信託免許をもつ信託会社または銀行が受託者として、委託者が当該金融資産を受託者に譲渡し、それが信託勘定に組み入れられる。信託勘定に設定された譲渡資産は、受託者自体の破産から法律により分離されなければならないとされている。ただし、破産してやっと分離されるのであり、受託資産は受託者が運用できる。この点で信託方式は倒産隔離として不完全であり、発行債券の価値が損なわれない場合であっても運用によっては投資家と利益相反する可能性が残る。信託受益権は、受託者が発行し、紙の形で保有される。 信託業法の2004年12月改正以降は、節税効果も期待されている。 知的財産権の証券化では信託会社が自ら知的財産の活用等を図ることもできる。 その他、組合を用いる方法もあるが割愛する。 資産を譲り受けたSPVが破綻することを防ぐため、SPVには証券発行以外の役割を与えないことも倒産隔離の一手法として用いられている。 リスクを証券化した場合は原資産が現物の場合と異なり、特別目的事業体が債務を負うため、倒産隔離は不完全なものとなる。また、信託方式で利益相反を防ぐために国債へ投資をしていた場合は元本割れのときに原資産を目減りさせることとなる。
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