【徹甲榴弾】(てっこうりゅうだん)
Armor Piercing High Explosive (APHE)
徹甲弾の弾頭に比較的少量の爆薬を搭載し、装甲や障害物に突き刺さってから炸裂する弾丸。
分類上は別物だが、貫通時に発火する劣化ウラン弾、地表を貫通して地下の目標を爆撃するバンカーバスターも一種の徹甲榴弾と言える。
一般に弾丸の破壊力は貫通しない場合の方が大きく、徹甲弾が貫通した際の小さな弾痕は目標のバイタルパートに直撃しないと十分な有効打を与えない場合がある。
徹甲榴弾はそのような状況を想定して配備され、目標を貫徹しきらず途中で失速する程度に貫通性能を落とし、または目標を貫いて通過する直前に弾頭を炸裂させる事で通常の徹甲弾より大きな被害を期待するものである。
現代では成形炸薬弾の発明によって対戦車兵器としての有用性を大幅に減じており、主に対物ライフルや対空機関砲など多くの命中弾を期待できない状況で使用される。
徹甲弾
徹甲弾(てっこうだん、英語: armor-piercing shot and shell)は、装甲を貫通させるために設計された砲弾である。艦砲・戦車砲・航空機関砲等で用いられる。弾体の硬度と質量を大きくして装甲を貫くタイプ(AP, APHE)と、逆に弾体を軽くして速度を高めて運動エネルギーで貫くタイプ(HVAP, APDS, APFSDS)が存在するが、本項では主に前者について述べる。
理論
徹甲弾を侵徹の様式から分類すると、弾体が損傷を受けず健全なまま侵徹が生じる徹甲弾と、弾体が消耗する徹甲弾に分けられる[1]。
弾体が健全な徹甲弾
徹甲弾の運動について定式化した最初の理論はBenjamin Robins(英語版)および、Leonhard Eulerによって提案された[1]。この理論では、徹甲弾の運動はニュートンの運動方程式に従って等加速度運動するものとして取り扱った。すなわち、徹甲弾は徹甲弾の材質と寸法、および装甲の強度によって徹甲弾の加速度が決定され、停止するまでの距離が弾体の性能に相当する。等加速度運動であるため、侵徹深さは衝突速度の2乗に比例する。一方、Jacob de Marreの式などの徹甲弾の貫通深さと衝突速度の関係についての経験則では、貫通深さは衝突速度の1.3~1.4乗に比例し、2乗とはならない[2]。
Jean-Victor Ponceletは1835年、侵徹の各瞬間での速度が弾体の加速度に影響するモデルを提案した。弾体の加速度
(APCBC)
(APCR/HVAP)
着弾時に硬芯部のみが装甲貫徹することを目的としている。
(APHE)
遅延信管を備え、弾体が装甲を貫徹して、目標の内部に入ってから爆発するよう設定されている。
(APDS)
発射後、装弾筒は外れ、弾体(青色部)のみが飛翔・着弾する。
(APFSDS)
発射後、装弾筒は外れ、弾体(青色部)が飛翔・着弾する。安定翼により飛翔中の安定を確保する。
注釈
- ^ 上式の