後翅の退化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/21 03:52 UTC 版)
カタビロオサムシ亜族に属する種以外の大半のオサムシの後翅は小さくなるか、しばしば糸状になるまで退化して飛ぶ事はできない。そのため、地理的な種分化が激しく起きており、種分化や種分化後の種の維持機構、分布境界における交雑による遺伝子浸透などの絶好の研究材料として進化系統学や生態学の研究材料として盛んに研究が行われている。また、この「退化」は極めて歴史が浅いと考えられ、マークオサムシなどは時折「退化」していない立派な後翅を備えた先祖帰り個体が突然変異的に出現する(筋肉は伴っていないので飛翔は出来ない)。逆に、後翅だけでなく上翅までもが丸ごと消失してしまっているマイマイカブリの異常個体も稀に出現する。 カタビロオサムシ亜族のオサムシは多くのオサムシ類と異なり、地表のみでなく樹上をも活動範囲としてチョウやガの幼虫を専門に捕食するのみならず、飛翔によって広域移動をすることが知られる。 例えばクロカタビロオサムシは、ブナアオシャチホコやマイマイガなど周期的に大発生するガの幼虫を主たる餌としており、これらの大発生と減少に伴って激しく増減することが知られるが、獲物のブナアオシャチホコ幼虫を食い尽くした森林から昼間に大挙して飛び立ち、別の森林に群を成して移動することが目撃されている。また人間に開発された農村や都市近郊のような環境に適応し、畑などでヨトウムシなどを捕食しているエゾカタビロオサムシが、夜間郊外の住宅地の街灯に飛来しているのを見ることも稀ではない。また、カタビロオサムシ類は他のオサムシ類に比べて卵も小さく、産卵数も1桁ほど多い傾向にある(多くのオサムシ類が一生にせいぜい数十粒なのに対し、カタビロオサムシ類では一生に数百粒の産卵能力があると言われている)。産卵方法も、他のオサムシ類が腹部の末端だけを土中に差し込み、丁寧に部屋を作って1粒ずつ時を置いて産卵するのに対し、カタビロオサムシ類は体の全体を土中に埋めて一度に何粒もまとめて産卵することが、エゾカタビロオサムシで観察されている[誰?]。 日本ではガ類の幼虫食で都市部でも見られるエゾカタビロオサムシ、カタツムリ食で特異な形をしているマイマイカブリ、フトミミズ科食で関東地方に多いアオオサムシなどがよく知られている。
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