座談会「近代文學の反省」とは? わかりやすく解説

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座談会「近代文學の反省」

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/16 08:01 UTC 版)

近代文学 (雑誌)」の記事における「座談会「近代文學の反省」」の解説

伊吹武彦主宰雑誌世界文學1946年10月号に近代文學同人による座談会「近代文學の反省」が掲載された。 平野 近代文學を語る――といふ座談會テーマは、世界文學觀點からと、日本近代文學といふ點からと解釋されるわけですが、まあ身近かな近代日本文學成立ちその確立といふやうな問題から、世界文學觀點まで押しひろめて行つたらどうかと思ふのです。ひとつ――プロレタリア文學運動における個人位置、もつとひろくプロレタリア文學運動といふものが現在の立場から見て、どういふプラスとマイナスとを持つてゐたかといふ點で山室君、何か意見ない?山室 マルキシズム理論からいへば、だいたい個人意識といふものは、社會経済的政治的な發展の上構造として、獨立意識といふものをあまり認めないわけだね。さうなると、結果として現實追随といふ傾きがどうしても出て来ると思ふ。そこで戰争になつたんだか仕方がない、なるべくソツとやりすごさうといふふうにも考へられるわけだがね。一方に……。 埴谷 うん。もつと理想的な形でいへば、戰争になつても戰争反對しようといふ、もつと積極的な立場も一つ假定としてはとり得たわけなんだね。さういふことをしないで仕方がないんだといふ具合受け流して來た。そこが非常にマイナスの面ぢやないかと思ふね。 佐々木 仕方がないとは考へてゐなかつたんだらう。やはり内心では戰争反對してゐたわけだね。戰争は勿論嫌惡してゐたわけだよ。だけど、現實努力として戰争反對できない反戰運動できないといふことにたいする痛切な自己批判ね、さういふものはなかつたんぢやないか。 埴谷 さうなんだ。僕が仕方がないといふのは、反對できないといふことにたいして、今度反對できないならできないで、自分個人にたいする再認識明白にしなかつた點をいふのだがね。さういふことの淵源は、プロレタリア文學における個人、もつと具體的にいへば、プロレタリア文學中における小ブルジヨア、インテリゲンツイアの自主的ないろいろな働きさういふものにたいして傳統的に非常に輕く考へる、といふやうなことがあつたんぢやないかと思ふのだね。 佐々木 つまりこの戰争帝國主義戰争である。フアシズムの侵略戰争である。だから理論的にいへば當然その反動反對するといふ程度のこと、つまりおれは正し理論を知つとるぞ、といふことだけでひそかに満足してゐなかつたか。 荒 さういふ政治的な割切れぬ反感、それを自分生身引寄せ感じ方をするといふところまでゆかなかつた。それはプロレタリア文學が、亞流文學あるひは政治的文學であつたところに原因があるやうに思ふのだね。 平野 とにかくプロレタリア文學運動といふものは、日本近代文學に一應締括りをつけるわけだね。さういふ近代日本文學一つ決着點であるプロレタリア文學運動が、昭和九年一應挫折して、さうして戰争になつたわけだが、それが今荒君が言つたみたいに弱點戰争中露呈したといふことになれば……。 佐々木 つまりね、轉向問題起つて……。 荒 轉向初期においてはやはり皆心から良心的に惱んでゐるのだね。それが戰争になると初めからあきらめてしまつてゐる。だから轉向したといつても良心疚しい思ひをしなくて済むといふふうになつてしまつた。 平野 さういふ自己批判不徹底といふことね。それは例へば、プロレタリア文學運動敗北してその後轉向文學出て一般にいへば不安の文學といふやうなものが發生したわけなんだ。あるひは主體的なリアリズムといふやうな、非常に個體的なものにアクセントを持つてをつたもの、それから行主義といふふうなもの、浪漫派といふものが出て來た。プロレタリア文學の一應のが外づれたときに、混沌としたいろいろな出て來たわけだ。その場プロレタリア文學運動擔當した主な人たちが、次に興つて來るいはゞ不安の文學といふふうなものをどういう風に見てゐたかね。………(以下略

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