平衡状態の安定性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/18 14:31 UTC 版)
「ロジスティック方程式」の記事における「平衡状態の安定性」の解説
上記で、N = 0 および N = K のときはいくら時間が経過しても個体数 N は増加も減少もしないことから、これらの状態を平衡状態や定常状態と呼ぶことを説明した。平衡状態では、N = 0 または N = K という一点に留まり続ける。数学の力学系分野では、このような点を不動点や平衡点と呼ぶ。平衡状態には安定な平衡状態と不安定な平衡状態がある。安定な平衡状態とは、 その平衡状態の点から少しずれたとしても、時間が経過すれば平衡状態へ戻り、収束することを意味している。また、不安定な平衡状態とは、平衡状態の点から少しずれたとき、時間経過すると平衡状態とのズレはどんどん大きくなっていき、平衡状態に戻らないことを意味している。ロジスティック方程式の場合は、N = K 時の平衡状態が安定、N = 0 時の平衡状態が不安定となっている。すなわち、初期個体数 N0 が K または 0 であれば、時間経過によらず常に同じ値を取り続けることは同じだが、N0 が平衡状態から少しずれたときの挙動は正反対となる。 この安定・不安定の様子は、ロジスティック曲線の傾きをベクトル場として表すことで読み取ることができる。時間経過に従って、全ての解は、これらのベクトルの矢印に沿って動いていく。初期個体数が N0 > 0 であれば、t → ∞ で N は K に収束し、N0 < 0 であれば、t → ∞ で N は −∞ に発散することが分かる。 あるいは、上記で説明した個体数 N と増加率 dN/dt の関係曲線からも、安定か不安定かの判別が可能である。N = K の点の右側に点があるとき、dN/dt の値は負なので、N は減少していき、K に近づくことになる。N = K の点の左側に点があるときは、dN/dt は正なので、N は増加していき、同じく K に近づくことになる。N = 0 の点についても、左右にずれたときの dN/dt の値の正負から、0 の点から離れていくことが理解できる。 あるいは、安定性理論における線形安定性解析の考えにもとづいて、より一般的に安定性を判別することもできる。dN/dt = f(N) 、その N による微分を d(f(N))/dN = f ′(N)、平衡状態の点を Ne と置くとする。このとき、f ′(Ne) < 0 ならば Ne は安定な平衡点で、f ′(Ne) > 0 ならば Ne は不安定な平衡点であると判別できる。ロジスティック方程式の場合は、 f ( N ) = d N d t = r N ( 1 − N K ) {\displaystyle f(N)={\frac {dN}{dt}}\ =rN\left(1-{\frac {N}{K}}\right)} なので、 f ′ ( N ) = r ( 1 − 2 N K ) {\displaystyle f'(N)=r\left(1-{\frac {2N}{K}}\right)} となり、f ′(K) = −r < 0, f ′(0) = r > 0 となることが確認できる。
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平衡状態の安定性
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「熱力学ポテンシャル」の記事における「平衡状態の安定性」の解説
系が温度 Tex の外界と接しているとき、熱力学第二法則から、系に変化が起きるとき δ ′ Q ≤ T ex δ S {\displaystyle \delta 'Q\leq T_{\text{ex}}\delta S} である。一方、エネルギー保存則から δ ′ Q = δ U + δ ′ W = δ U + p ex δ V − μ ex δ N {\displaystyle \delta 'Q=\delta U+\delta 'W=\delta U+p_{\text{ex}}\delta V-\mu _{\text{ex}}\delta N} である。pex は外界の圧力、μex は外界の化学ポテンシャルである。これらをまとめると、 δ U − T e x δ S + p e x δ V − μ e x δ N ≤ 0 {\displaystyle \delta U-T_{\mathrm {ex} }\delta S+p_{\mathrm {ex} }\delta V-\mu _{\mathrm {ex} }\delta N\leq 0} となる。系が平衡状態にあるとき、変化が起こらないので、 δ U − T e x δ S + p e x δ V − μ e x δ N > 0 {\displaystyle \delta U-T_{\mathrm {ex} }\delta S+p_{\mathrm {ex} }\delta V-\mu _{\mathrm {ex} }\delta N>0} である。これが成り立つ条件は、1次変分について ( ∂ U ∂ S − T e x ) δ S + ( ∂ U ∂ V + p e x ) δ V + ( ∂ U ∂ N − μ e x ) δ N = 0 {\displaystyle \left({\frac {\partial U}{\partial S}}-T_{\mathrm {ex} }\right)\delta S+\left({\frac {\partial U}{\partial V}}+p_{\mathrm {ex} }\right)\delta V+\left({\frac {\partial U}{\partial N}}-\mu _{\mathrm {ex} }\right)\delta N=0} および、2次変分について 1 2 ( ∂ 2 U ∂ S 2 δ S 2 + ∂ 2 U ∂ V 2 δ V 2 + ∂ 2 U ∂ N 2 δ N 2 ) + ∂ 2 U ∂ S ∂ V δ S δ V + ∂ 2 U ∂ S ∂ N δ S δ N + ∂ 2 U ∂ V ∂ N δ V δ N > 0 {\displaystyle {\frac {1}{2}}\left({\frac {\partial ^{2}U}{\partial S^{2}}}\delta S^{2}+{\frac {\partial ^{2}U}{\partial V^{2}}}\delta V^{2}+{\frac {\partial ^{2}U}{\partial N^{2}}}\delta N^{2}\right)+{\frac {\partial ^{2}U}{\partial S\partial V}}\delta S\delta V+{\frac {\partial ^{2}U}{\partial S\partial N}}\delta S\delta N+{\frac {\partial ^{2}U}{\partial V\partial N}}\delta V\delta N>0} である。 1次変分の条件から 系が熱を交換するとき(δS ≠ 0)、 ∂ U ∂ S ≡ T = T ex {\displaystyle {\frac {\partial U}{\partial S}}\equiv T=T_{\text{ex}}} 系の体積が変化するとき(δV ≠ 0)、 ∂ U ∂ V ≡ − p = − p ex {\displaystyle {\frac {\partial U}{\partial V}}\equiv -p=-p_{\text{ex}}} 系が物質を交換するとき(δN ≠ 0)、 ∂ U ∂ N ≡ μ = μ ex {\displaystyle {\frac {\partial U}{\partial N}}\equiv \mu =\mu _{\text{ex}}} などの平衡条件が得られる。 2次変分の条件からは ∂ 2 U ∂ S 2 = ( ∂ T ∂ S ) V = T C V ≥ 0 {\displaystyle {\frac {\partial ^{2}U}{\partial S^{2}}}=\left({\frac {\partial T}{\partial S}}\right)_{V}={\frac {T}{C_{V}}}\geq 0} ∂ 2 U ∂ V 2 = − ( ∂ p ∂ V ) S = 1 V κ S ≥ 0 {\displaystyle {\frac {\partial ^{2}U}{\partial V^{2}}}=-\left({\frac {\partial p}{\partial V}}\right)_{S}={\frac {1}{V\kappa _{S}}}\geq 0} ∂ 2 U ∂ S 2 ∂ 2 U ∂ V 2 − ( ∂ 2 U ∂ S ∂ V ) 2 = T C p 1 V κ S = T C V 1 V κ T ≥ 0 {\displaystyle {\frac {\partial ^{2}U}{\partial S^{2}}}{\frac {\partial ^{2}U}{\partial V^{2}}}-\left({\frac {\partial ^{2}U}{\partial S\partial V}}\right)^{2}={\frac {T}{C_{p}}}{\frac {1}{V\kappa _{S}}}={\frac {T}{C_{V}}}{\frac {1}{V\kappa _{T}}}\geq 0} などが得られる。ここで、CV は定積熱容量、Cp は定圧熱容量、κS は断熱圧縮率、κT は等温圧縮率である。 平衡状態の安定性から熱力学ポテンシャルは一般に凸関数となる。
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