師要素
師管要素
師要素
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/11 04:00 UTC 版)
師要素 (篩要素、しようそ、sieve element) は管状の細胞であり、光合成産物などの有機物の通道に機能している (→#師部輸送を参照)。師要素は生細胞ではあるが、核や液胞などの細胞小器官がしばしば退化しており、物質が通道しやすくなっている。またしばしば特殊な色素体をもつ。細胞壁はやや厚いが、二次細胞壁を欠く。細胞間の物質輸送は、原形質連絡が拡大した師孔 (篩孔、sieve pore) を通して行われる。師孔において、原形質連絡の周囲はカロースが沈着 (肉状体ともよばれる) している。師要素の細胞表面には、多数の師孔が集まって師域 (篩域、しいき、sieve area) を形成している。師要素が機能するのはふつう数ヶ月程度であり (長年機能している例もある)、一定期間後または損傷した師要素ではカロースがさらに沈着して師孔は閉塞される。師要素として、被子植物は師管要素を、それ以外の維管束植物 (シダ植物や裸子植物) は師細胞をもつ。 師管要素 (篩管要素、しかんようそ、sieve tube element, sieve tube member; 師管細胞 sieve tube cell) は、上下端で縦につながって師管 (篩管、しかん、sieve tube) を形成している (右図)。師管要素どうしの上下の隔壁は師板 (篩板、しばん、sieve plate) とよばれ、大型の師孔 (ときに直径 10 µm 以上) が集合した「ふるい (篩)」のような師域が形成されている (右図)。師板における師域の配置様式には多様性があり、細長い師域が階段状に配置しているもの (例:シュウカイドウ) や不定形の師域が集まっているもの (例:トウ属) は複合師板 (compound sieve plate) とよばれ、1個の大きな師域をもつもの (例:カボチャ;右図) は単師板 (simple sieve plate) とよばれる。師管における物質輸送は、主に師板を通して行われるが、ふつう側面にも師域が存在する (側師域)。ただしこのような師域の師孔は小さい。師板は側壁に対して斜めのものからほぼ直角のものまである。師管要素には、同一の母細胞から不等分裂によって形成された小型の細胞である伴細胞 (はんさいぼう、companion cell) が付随している。伴細胞は多数の原形質連絡 (ときに原形質連絡が分枝) によって師管要素とつながっており、糖などは伴細胞を介して師管要素へ運ばれる。また伴細胞はタンパク質などを送ることで師管要素の代謝を制御していると考えられている。師管要素・師管は、基本的に被子植物に特徴的な構造であるが、被子植物の中でアウストロバイレヤ科は師管を欠く。 師細胞 (篩細胞、しさいぼう、sieve cell) は一般的に師管要素より細長く紡錘形であり、側面で互いに接して師細胞組織 (篩細胞組織、sieve cell tissue) を形成している。師板をもたず、細胞側面に散在する師域を通して物質輸送が行われる。師管にくらべて通道効率は低いと考えられている。師細胞には伴細胞は付随していないが、裸子植物にはタンパク細胞 (albuminous cell) とよばれる細胞が師細胞に付随しており (師細胞と姉妹の関係にはない)、伴細胞と同様に師細胞の機能を補助していると考えられている。師細胞は、被子植物以外の維管束植物に存在する。 師管要素と師細胞の関係は、木部における道管要素と仮道管の関係に似ているため、師管を道管状師管 (vessel form sieve tube)、師細胞組織を仮道管状師管 (tracheid form sieve tube) とよんでいたこともある。
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