小町田粲爾とその周辺人物
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「当世書生気質」の記事における「小町田粲爾とその周辺人物」の解説
小町田 粲爾(こまちだ さんじ) ある私塾の書生。21-22歳くらい。真面目で神経質な性格。 飛鳥山で、芸妓になっていた幼馴染で義妹のお芳こと田の次に偶然に再会する。その後逢瀬を重ねるが、二人の関係を知らない周囲からは、芸妓に溺れているものと誤解され、次第に追い詰められていく。第11回で品行不良として休学処分となるが、のちに復学。 立場上は主人公だが、特に活躍らしい活躍を見せず、結末でもほとんど傍観者にとどまっている。そのため発表当初、逍遥の友人であった高田早苗は、サッカレーの『虚栄の市』(副題「主人公のいない小説」)を引き合いに出して、本作を「主人公なきの小説」と評した。 モデルは高田早苗だとする説があるが、逍遥は「事件も虚構、性格も似てゐない」「小町田の性格や履歴は全く半峯君(引用者注:高田早苗の号)とは無関係である」と否定している。関良一は、実際のモデルは逍遥自身だと推定している。 小町田 浩爾(こまちだ こうじ) 粲爾の父。官吏(やくにん)だったが失職し、ある銀行の属吏(したやく)となる。 鈴代 常(すずしろ つね) 小町田浩爾の妾で元芸妓。お芳の二人目の養母。のち、浩爾か失職したため妾として囲っておくことができなくなり、芸妓に復帰して「小常」(こつね)と名乗る。その後、園田の妾となる。優しい性格。 全次郎(ぜんじろう) お常の兄。放蕩者でお秀の情夫。上野戦争の際に流れ弾に当たり死亡する。 田の次(たのじ)/お芳(およし) 本編のヒロイン。柳村屋(やなむらや)の芸妓。17-18歳くらい。利発な性格でしっかり者。 幼児のときに上野戦争に遭って孤児となり、ある50代の女性に引き取られて「お芳」と名付けられるが、その養母も死んだため家を追い出されたところを、偶然にめぐりあった浩爾とお常に引き取られ、粲爾とともに育てられる。のちに浩爾が失職したためお常を囲っておくことができなくなり、お常が芸妓に戻ったため、自らも芸妓の道へ進む。芸妓としては最初小芳(こよし)、のち二代目小常(こつね)と名乗ったが、歌舞伎役者の故沢村田之助に似ていると評判となったため「田の字」と呼ばれるようになり、のちに自らも「田の次」と名乗る。 実は守山友芳の生き別れの妹、お袖。末尾では脱籍して元の通り守山友定の娘となったことが語られる。 高田早苗によれば、当時、高田や逍遥、市島謙吉、山田一郎、石渡敏一らがよく通っていた神保町の「松月」という天ぷら屋に「お鶴」という美人の女中がおり、彼女がのちに芸妓になったのをヒントにした可能性があるという。逍遥はこれについて肯定も否定もしていない。一方、関良一は、実際のモデルは根津遊廓大八幡楼の遊女で、のちに逍遥と結婚する花紫こと鵜飼セン(仙子)だと推定している。
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