対空攻撃能力について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 05:51 UTC 版)
大和型戦艦の副砲は条約型巡洋艦、駆逐艦に対処するためのものだが、対空射撃には有効とは言い難く、副砲を全廃して両用砲に転換したノースカロライナ級やキング・ジョージ5世級の方が先進性があったと言われる。平間洋一の場合、米新戦艦に対して劣っていた旨を記述している。海軍砲術学校防空部は、15.5cm砲を廃止して10cm高角砲に変えるべきという意見を提出している。しかし、大和型2隻の戦闘詳報によると副砲は遠距離での雷撃機等の迎撃に有効であるとの記述があり、通説とは逆に日本海軍は副砲の対空能力を高く評価している。 実際、仏独伊が大和型と同時期に建造した戦艦でも副砲と高角砲は分離されている。特に仏海軍では、ダンケルク級で一旦両用砲を採用したが、両用砲は平射砲としても対空砲としても能力不足という判定から、次のリシュリュー級で、再び高角砲と副砲に分離しているという事実はあまり認知されていない。現実にキング・ジョージ5世級の両用砲は、装填機構や砲の追従性の問題で対空射撃が困難であったと判定されている。ノースカロライナ級以降の米戦艦搭載両用砲(38口径12.7cm両用砲MK.28)は、対水上砲として考えた場合、有効射程が短すぎて、駆逐艦の雷撃を阻止できない可能性が多分にあり、能力不足と指摘されている。第三次ソロモン海戦では同砲を装備した戦艦ワシントンとサウスダコタが日本軍水雷戦隊を迎撃したが、駆逐艦綾波を撃沈したのみで水雷戦隊の阻止に失敗し、雷撃を許している。合理的な両用砲だが、多くの海軍が採用しなかったのは理由があるのである。 大和型の副砲は、充分な数の護衛艦を持てない劣勢な海軍(米英以外の全て)が、敵の水雷戦隊を「魚雷を放つ以前の距離で迎撃する」ための兵装である。つまり12.7cm程度の小口径高角砲では、水雷戦隊阻止に充分な有効射程を持てないため、より大口径の副砲が必要という観点から配置されている。主砲を水雷戦隊の迎撃に使用する愚を考えるなら、分離は一理あるという説もある。実際、サマール島沖では、大和は近接した米駆逐艦ジョンストン、ホーエルに副砲で命中弾を与えたとの説がある。 しかし、上記のジョンストン、ホーエルともに大和の副砲が命中したのは可能性があるのは雷撃が実行された後であり、第三次ソロモン海戦でのアメリカ戦艦同様、雷撃の阻止に失敗している(特にジョンストンは副砲が命中した後も戦闘を続行している)。実戦では大口径の副砲でも「魚雷を放つ以前の距離で迎撃する」事はできず、水雷戦隊阻止においての優位性が証明される事はなかった。
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