対称群のホモロジー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/24 14:42 UTC 版)
対称群 Sn の群ホモロジーは極めて正則かつ安定である。一次のホモロジー(つまりアーベル化)は H 1 ( S n , Z ) = { 0 n < 2 Z / 2 n ≥ 2 {\displaystyle H_{1}(S_{n},\mathbb {Z} )={\begin{cases}0&n<2\\\mathbb {Z} /2&n\geq 2\end{cases}}} である。n < 2 のときは自明、n ≥ 2 のときは符号写像 sgn: Sn → C2 に対応している。これは以下のように簡単に計算できる。Sn は対合(位数 2 の元、2-サイクル)で生成されるから、写像 Sn → Cp が非自明なのは p = 2 のときであり、またすべての対合は、共軛であるから(アーベル群上の共軛変換は自明なので)そのアーベル化の同じ元へうつる。したがって、唯一可能な写像 S n → C 2 ≅ { ± 1 } {\displaystyle S_{n}\to C_{2}\cong \{\pm 1\}} は対合を 1 へ移す(自明写像)か −1 へ移す(符号写像)。符号写像が矛盾なく定まっていることは確認すべきことだが、それを認めれば、これで Sn の一次ホモロジーが得られる。 二次のホモロジー(具体的にはシューア因子(英語版))は H 2 ( S n , Z ) = { 0 n < 4 Z / 2 n ≥ 4 {\displaystyle H_{2}(S_{n},\mathbb {Z} )={\begin{cases}0&n<4\\\mathbb {Z} /2&n\geq 4\end{cases}}} である。これは (Schur 1911) で計算されており、対称群の二重被覆(英語版) 2⋅Sn に対応する。 交代群の低次ホモロジーに関する例外的(英語版)な同型(非自明なアーベル化の存在に対応して H 1 ( A 3 ) ≅ H 1 ( A 4 ) ≅ C 3 {\displaystyle H_{1}(A_{3})\cong H_{1}(A_{4})\cong C_{3}} が成り立ったり、例外的三重被覆の存在によって H 2 ( A 6 ) ≅ H 2 ( A 7 ) ≅ C 6 {\displaystyle H_{2}(A_{6})\cong H_{2}(A_{7})\cong C_{6}} が成立するなど)に対して、交代群を対称群に取り替えることはできないことに注意すべきである。これは、交代群に関する現象から対称群に関する現象が導ける(例えば自然な全射 A4 ↠ C3 は自然な全射 S4 ↠ S3 に延びるし、A6 および A7 の三重被覆は S6 および S7 の三重被覆に延びる)けれども、しかしそれは「ホモロジー的」(ホモロジーを取る操作と可換)ではないという意味である。つまり、全射 S4 ↠ S3 で S4 や S3 をそのアーベル化に取り替えることはできないし、後者の例では三重被覆をホモロジーに対応させることができないということになる。 このホモロジーは安定ホモトピー(英語版)論でいう意味で「安定」である。すなわち、包含写像 Sn → Sn+1 と適当な整数 k が存在して、ホモロジーの間の包含写像 H k ( S n ) → H k ( S n + 1 ) {\displaystyle H_{k}(S_{n})\to H_{k}(S_{n+1})} が十分大きな n に対して同型となる。これはリー群のホモロジーの安定性の類似である。 無限対称群のホモロジーはそのコホモロジー代数をホップ代数化することによって (Nakaoka 1961) で計算されている。
※この「対称群のホモロジー」の解説は、「対称群」の解説の一部です。
「対称群のホモロジー」を含む「対称群」の記事については、「対称群」の概要を参照ください。
- 対称群のホモロジーのページへのリンク