定義域とグラフ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/18 01:32 UTC 版)
「ロジスティック写像」の記事における「定義域とグラフ」の解説
前述のように、ロジスティック写像には生物の個体数の変動を考えるモデルとしての側面がある。このとき、ロジスティック写像の変数 x は生物の個体数を最大生息数で割った値であったから、x が取り得る数値は 0 ≤ x ≤ 1 の間に限られる。そういった事情もあり、ロジスティック写像の変数の範囲を区間 [0, 1] に限って、その振る舞いが議論されることが多い。 変数を常に 0 ≤ x ≤ 1 に限定しようとすると、必然的にパラメータ a が取れる範囲は 0 から 4 まで (0 ≤ a ≤ 4) に限定される。なぜならば、xn が [0, 1] の範囲内にあれば、xn+1 の最大値は a/4 となっている。したがって、a > 4 では xn+1 の値が 1 を超える可能性が出て来てしまう。一方、a が負のときは、x が負の値を取るようになってしまう。 写像のグラフを利用することで、その振る舞いの多くを知ることもできる。ロジスティック写像 xn+1 = ax(1 − xn) のグラフとは、横軸を xn(あるいは x)とし、縦軸を xn+1(あるいは f (x))として、平面上に xn と xn+1 の関係を示した曲線である。ロジスティック写像のグラフは、a = 0 の場合を除き、 ( x n , x n + 1 ) = ( 0.5 , a 4 ) {\displaystyle (x_{n},x_{n+1})=\left(0.5,{\frac {a}{4}}\right)} (2-1) を頂点とする放物線の形をしている。a を変化させると頂点は上下に動き、放物線は形を変える。また、ロジスティック写像の放物線は横軸(xn+1 = 0 の直線)と2点で交わる。(xn, xn+1) = (0, 0) と (xn, xn+1) = (1, 0) がその2つの交点で、これらの交点の位置は a の値に影響されず一定である。 写像のグラフは、とくにロジスティック写像のような1変数の写像のグラフは、その写像の振る舞いを理解するための鍵である。グラフの効能の一つは、不動点と呼ばれる点の図示である。写像のグラフに重ねるように y = x の直線(45°の直線)を引く。この45°直線とグラフが交わる点があれば、その点が不動点である。式で書くと、不動点とは f ( x ) = x {\displaystyle f(x)=x} (2-2) を満たしている点であり、写像を適用しても変化しない点を意味する。不動点を xf と表記することにする。ロジスティック写像の場合に式 (2-2) を満たす不動点は、ax(1 − x) = x を解いて、 x f 1 = 0 {\displaystyle x_{f1}=0} (2-3) x f 2 = 1 − 1 a {\displaystyle x_{f2}=1-{\frac {1}{a}}} (2-4) の2点である(a = 0 の場合を除く)。不動点の概念は離散力学系において最も重要となる。 1変数写像に対して使えるもう一つのグラフを利用した技術が、クモの巣図法と呼ばれる手法である。横軸上に初期値 x0 を決めた後に、そこから f (x) の曲線まで縦向きに直線を引く。f (x) の曲線にぶつかったところから y = x の45°直線まで横向きに直線を引き、45°直線にぶつかったところから f (x) の曲線まで縦向きに直線を引く。これを繰り返すことで、平面上にクモの巣状ないし階段状の図ができる。実はこの作図は図示的に軌道の計算を行ってることに等しく、作成されたクモの巣状の図は x0 から出発する軌道を表している。この図法によって、軌道の全体的な振る舞いを一目で見ることができる。
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