宇宙の軍事利用競争
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/27 02:58 UTC 版)
宇宙の科学的研究と並行して、宇宙の軍事利用のための開発に向けた動きも米ソ双方で進められていた。これらは注目こそ浴びなかったものの、開発競争以外の何者でもなかった。アメリカではNASAが宇宙開発を一元化した後も、軍は独自の宇宙開発を続けていた。スプートニク1号の打ち上げ以前から、米ソ両国は偵察衛星の開発計画に着手していた。ソビエトのゼニット衛星は大気圏再突入カプセルに陸上撮影用のカメラを収めた地表撮影衛星で、コロリョフが軍事・研究両方に使えるよう設計したものであったが、これがボストーク宇宙船のオリジナルになった。ゼニット・スパイ衛星はアメリカ空軍の衛星・ディスカバラーと同じような技術を持っており実用化の先行に向けて競い合っていた。1960年8月のディスカバラー13号では、史上はじめて軌道上からのカプセル回収に成功したが、これはソ連による衛星からのカプセル回収にわずか1日先んじた。こうした偵察衛星など軍事衛星の脅威に対し、米ソ双方が衛星攻撃兵器を開発した時期もあった。 米ソ双方が大規模な軍事用宇宙計画を立てたが、「アメリカが模型だけを完成させて計画を中断する一方、ソ連は同様の計画の実機を建造し、場合によっては軌道上に打ち上げる」というパターンがしばしば繰り返された。 超音速大陸間巡航ミサイル。アメリカの「ナヴァホ・ミサイル」(試験計画中止)対、ソ連の「ブラン巡航ミサイル」(計画のみ) 有翼宇宙船。米空軍のX-20ダイナソア(Dyna-Soar、模型のみ)対、ソ連のMiG-105(試験飛行) 衛星偵察有人カプセル。米空軍のブルー・ジェミニ(模型のみ)対、ソ連のソユーズ偵察船(計画のみ) 軍事用宇宙ステーション。米空軍の有人軌道実験室(MOL、Manned Orbiting Laboratory、計画のみ)対、ソ連のアルマース計画(Almaz、修正のうえサリュート2号、3号、5号として実現) 大気圏突入時の耐熱シールドにハッチがある軍事用有人カプセル。米空軍のジェミニB(飛行士なしで試験飛行)対、ソ連のVA-TKS、別名メルキュール・カプセル(TKSの一部として無人で飛行) 軍事用宇宙ステーションへの輸送機。米空軍のジェミニ・フェリー(計画のみ)対、ソ連のTKS(無人で打ち上げられ、サリュートにドッキング成功)
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