多様体上の関数
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/26 02:14 UTC 版)
m 次元 Cn 級多様体 M 上で定義された実数値関数 f を考える。 f: M → R これは、多様体上の点 p ∈ M に対して実数値 f(p) を対応させる関数である。特定の局所座標を考えているわけではないので、この関数の変数は (x1, x2, ..., xm) のように数を並べた座標ではなく単に点を表している。 多様体上には局所座標を貼ることができるためこの座標を用いた微積分などの計算が可能である。 M には座標近傍系 S = {(Uλ, φλ) | λ ∈ Λ} が与えられていて φ λ : U λ → U λ ′ {\displaystyle \varphi _{\lambda }:U_{\lambda }\to U'_{\lambda }} とすれば f ∘ φ λ − 1 : U λ ′ → R {\displaystyle f\circ \varphi _{\lambda }^{-1}:U'_{\lambda }\to R} つまり q = φλ(p) ∈ U′λ に対し f ∘ φ λ − 1 ( q ) = f ( φ λ − 1 ( q ) ) = f ( p ) {\displaystyle f\circ \varphi _{\lambda }^{-1}(q)=f(\varphi _{\lambda }^{-1}(q))=f(p)} である。この U′λ はユークリッド空間の部分集合なので その点である q は (x1, x2, ..., xm) のように数を並べた座標で表すことができ、この座標を用いて微積分などの計算が可能になる。座標近傍 (Uλ, φλ) においてその座標を用いて具体的に f(x1, x2, ..., xm) のように書かれた関数を (Uλ, φλ) に関する f の局所座標表示という。 ところで、多様体上の計算はなるべく局所座標のとり方に依存しないような計算をしたいという目標があるので U1 ∩ U2 上では、座標近傍 (U1, φ1), (U2, φ2) のそれぞれの計算は座標変換でうつり合う必要がある。 座標近傍 (U1, φ1) での関数の表示 f ∘ φ 1 − 1 : φ 1 ( U 1 ∩ U 2 ) → R {\displaystyle f\circ \varphi _{1}^{-1}:\varphi _{1}(U_{1}\cap U_{2})\to R} を座標近傍 (U2, φ2) での表示に変換すると ( f ∘ φ 1 − 1 ) ∘ ( φ 1 ∘ φ 2 − 1 ) : φ 2 ( U 1 ∩ U 2 ) → R {\displaystyle (f\circ \varphi _{1}^{-1})\circ (\varphi _{1}\circ \varphi _{2}^{-1}):\varphi _{2}(U_{1}\cap U_{2})\to R} 真ん中に挟まれた、 φ1−1 と φ1 は写像として打ち消しあうように見えるが、微分可能性を検証したいのでここではあえてしない。Cn 級多様体の座標変換は Cn 級であるから、この合成関数の微分可能性も高々 Cn 級であるとしか言えず、座標変換によっては n + 1 回以上の微分は不可能である場合もあるかもしれないので意味がない。したがって、Cn 級多様体上での関数は Cn 級までしか意味を持たない。もちろん、ある特定の座標近傍だけで定義された関数に n + 1 回以上微分できる関数を定義することはできるが、それはその座標近傍だけでの性質であり、Cn 級多様体という図形の性質とは異なるものになる。 したがって f: M → R が Cs 級関数であるとは、任意の座標近傍に対し、そこでの局所座標表示が Cs 級関数であることと定義される。ただし 0 ≤ s ≤ n とする。 M 上の Cs 級関数の全体を Cs(M) と表すことがある。
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