局所環付き空間
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/27 01:24 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動数学における局所環付き空間(きょくしょかんつきくうかん、英: locally ringed space)とは、位相構造や正則構造といった数学的構造を反映する「関数のなす可換環」の層(考えている空間の構造層と呼ばれる)を付与された位相空間のことである。関数 f が点 x で消えていないとき、x のごく近くでは逆数関数 1/f(x) を考えられることが公理化される。
定義
位相空間 X とその上の環の層 O の対 (X, O) は環付き空間(かんつきくうかん)と呼ばれ[1]、このとき層 O はその構造層と呼ばれる[2]。 X 上の環の層 O で、X の各点 x における O の茎 Ox が局所環になっているようなものは X 上の局所環の層と呼ばれ、O が局所環の層であるような環付き空間 (X, O) は局所環付き空間と呼ばれる。ここで、局所環の層とは開集合のなす圏から「局所環の圏」への反変関手とは限らないことに注意する必要がある。
二つの局所環付き空間 (X, OX) と (Y, OY) に対し、連続写像 f: X → Y と層の射 φ: OY → f∗OX の対 (f, φ) で、X の任意の点 x について誘導される準同形 OY, f(x) → OX, x が極大イデアルを極大イデアルの中にうつすようなものは (X, OX) から (Y, OY) への射と呼ばれる。
構成
X を位相空間とする。X の開集合 U に対して U 上の複素数値連続関数環 C(U) を与える対応は X 上の局所環の層(連続関数の層)になる。同様に X が可微分多様体や複素多様体のときはなめらかな関数の層や正則関数の層が局所環の層になる。これらの空間の間の連続写像や滑らかな写像、正則写像などは対応する局所環付き空間の間の射を自然に導く。
代数学において、可換環に対し自然に構成される局所環付き空間であるアフィンスキームや、それらの張り合わせとして定義される概型(スキーム)は可換環論と幾何学との間の諸概念の対応を与えている。
脚注
- ^ Hartshorne 1977, p. 72.
- ^ Onishchik 2001.
参考文献
- R. ハーツホーン『代数幾何学』1-3、高橋宣能、松下大介訳、シュプリンガーフェアラーク東京、2004年。
- (原書)Hartshorne, R. (1977). Algebraic Geometry. Graduate Texts in Mathematics. 52. Springer-Verlag. doi:10.1007/978-1-4757-3849-0. ISBN 0-387-90244-9. MR 0463157. Zbl 0367.14001
外部リンク
- Onishchik, A.L. (2001), "Ringed space", in Hazewinkel, Michiel (ed.), Encyclopaedia of Mathematics, Springer, ISBN 978-1-55608-010-4。
構造層
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/26 03:09 UTC 版)
多様体に Ck 構造を与える別のアプローチを使うことが便利なことがある。ここで k は 1, 2, ..., ∞, あるいは実解析的多様体に対して ω, である。座標チャートを考える代わりに、多様体自身の上に定義された関数から始めることができる。M の構造層、Ck と表記する、は、各開集合 U ⊂ M に対して連続関数 U → R の代数 Ck(U) を定義する関手の一種である。構造層 Ck が n 次元 Ck 級多様体の構造を M に与えるとは、任意の p ∈ M に対して、p の近傍 U と n 個の関数 x1, ..., xn ∈ Ck(U) が存在して、写像 f = (x1, ..., xn): U → Rn が Rn の開集合の上への同相写像で、Ck|U が Rn 上の k 回連続微分可能な関数の層の引き戻し(英語版)となることをいう。 とくに、この後者の条件が意味するのは、V に対して任意の関数 h ∈ Ck(V) は h(x) = H(x1(x),...,xn(x)), ただし H は f(V)(Rn の開集合)上の k 回微分可能な関数、と一意的に書けるということである。したがって、層論的な視点は、可微分多様体上の関数は局所座標において Rn 上の微分可能な関数として表現でき、a fortiori にこれは多様体上の微分構造を特徴づけるのに十分であるということである。
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