壁画の目的と成果
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/02 10:11 UTC 版)
「メキシコ壁画運動」の記事における「壁画の目的と成果」の解説
革命下のメキシコに起こった特異なモダニズム美術運動では、白人優位・ヨーロッパを理想とした美術に代わって、インディオの伝統に基づいた美術が求められた。また、民衆に社会主義革命の意義や成果をできるだけわかりやすく印象的に伝えることが重視された。そこで、以下のような内容と形式が求められたが、これは多くの効果を生んだ。 内容としてはメスティーソやインディオの民族主義的な覚醒を誘うため、メキシコの伝統や歴史が多く取り入れられた。民衆絵画の手法の導入のほか、ヨーロッパ人来訪前の生活やアステカ文明などの神話、スペイン人による征服と混血、文化の混交、農業労働者としての隷従と蜂起、革命の成就と分配、来るべき産業社会のもたらす果実といった歴史の引用である。結果、歴史や神話や時の流れが重層的に重なった、人類の歴史を語りつくすかのような重く濃密な内容となった。 形式としてはフレスコ画による壁画が用いられた。公共の場に描かれた大壁画は多くの人が一斉にいつでも見ることができ教育効果が高い。また文字が読めない貧しい人々にも絵でなら革命の意義や民族意識などが伝えられる。画家達にとっても、一握りのブルジョアだけのためでなく、公共性や社会性のある作品を作るという体験は有意義と思われ、キャンバスより大きく形が必ずしも四角形でない壁面という場所も、絵を描く場としては挑戦し甲斐のあるものだった。
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