基質適用範囲と制限
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/04/04 13:40 UTC 版)
「有機ホウ素化合物の反応」の記事における「基質適用範囲と制限」の解説
有機ホウ素化合物を用いた有機合成反応における基質適用範囲(スコープ)は非常に広い。有機ホウ素化合物の反応ではアルコールやカルボニル化合物、ハロゲン化物、過酸化物、アミンなど様々な化合物を合成することができる。ここではアルコール、カルボニル化合物、ハロゲン化物の合成について述べる。 有機ホウ素化合物を用いたアルコールの合成はカルボニル基への求核基の転位や有機ボランの酸化によってなされる。有機ボランと一酸化炭素、水素化物を反応させると一級アルコールが得られる。 (5) 2つの異なる置換基を持つ3級アルコールは酸の存在下、アルキニルホウ酸塩に2回転位反応をさせることで合成できる。1当量の酸を反応させ、続いて酸化または加水分解を行うことでそれぞれケトン、オレフィンが得られる(反応機構と立体化学のセクションを参照のこと)。. (6) ホウ酸塩のアシル化はカルボン酸ハロゲン化物の存在下で進行する。ここでは、ホウ酸塩はトリ(シクロペンチル)ボランとフェニルリチウムから合成される。3つのシクロペンチル基がダミーの官能基となり、転位反応が阻害される。 (7) トリアルキルボランをα-ハロエノラートと反応させると官能基を導入したケトンが生成する。転位が立体特異的に進行する(転位基の立体化学を保持しつつ、転位先のα炭素では反転する)ため、この反応はエナンチオ特異的なα-アルキルもしくはα-アリールケトンの合成に用いることができる。 (8) α-ハロエステルエノラートもボランに付加し、α位が官能基化された生成物を与える。しかし収率が若干落ちる。この反応においてはジアゾエステルやジアゾケトンも外部塩基の必要ない基質として用いられることがある。α,α’-ジハロエノラートはボランと反応し、α-ハロカルボニル化合物を与える。これはさらにα位に官能基を導入できる化合物である。 (9) ハロゲン化物は有機ボランを水酸化物またはアルコキシドで活性化してからX2と反応させることで合成できる。過剰の塩基を用いることで3つのアルキル基のうち2つがハロゲン化できるが、ジシアミルボラン(英語版)でヒドロホウ素化するとヒドロホウ素化したオレフィンのみを選択的にハロゲン化できる as the hydroborating reagent permits the selective halogenation of only the hydroborated olefin. (10) アルケニルボランを臭素やヨウ素と反応させると有機基の一つがホウ素に結合する転位反応が起きる。アルキニル基は選択的に転位し、酢酸ナトリウムと過酸化水素で処理することでエンイン(英語版)が得られる。 (11)
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